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「夏恋慕」
日が照ったグラウンドで走るあの子を今日も窓から見つめる。
艶めいた髪の毛が揺れる、何周目だろうか、暑い中ケロッと走ってしまう彼女の気持ちが、文化部の僕には分からない…。
放送原稿を仕上げなければならないというのに気づいたら彼女を目で追ってしまう僕はおかしい。少女漫画に出てくるヒロインじゃあるまいし、前まではこんな自分では無かった。
共通点は同じクラスと言うだけ、彼女はスポーツが出来て愛嬌もいいし、学級委員も務めている。
まあいわばムードメーカー的存在である。
きっと、彼女にとって僕はクラスメイトAぐらいの存在だろう…。
……何故だかいつからかそれがとてつもなく嫌とさえ思うようになった。
「うわぁ…キャラじゃない…」
声に出すほどだ。深いため息をつく。
こんな僕でも恋をしてしまっている。きっかけなんか思い出せないし分からない、
気がついたら好きだったのだ。
…とか自分語りをしているうちに小一時間を無駄にしてしまった。又だ。
早く原稿を書き上げなければ…。
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