囲碁と僕、僕が流した涙の理由

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竜也は幼い頃から囲碁が大好きで、きっかけは祖父がNHKの囲碁のプロ棋士同士の対局を観ていた時からだった。 幼い竜也にはそれがなんなのかわからなかったが、プロ棋士の対局は竜也の心を熱くさせるものがあった。 竜也はその日から祖父の家に通って毎日囲碁をするようになった。 祖父から定石を教わり竜也の囲碁の腕は日に日に上達していった。 祖父は囲碁道場に竜也を連れて行き、祖父は道場での顔馴染みに孫の竜也のことを紹介した。 祖父に道場に連れてきてもらえて竜也は嬉しかった。 様々な人と囲碁をして、竜也は囲碁の勝負に負けても楽しんでいた。 数年後、竜也は高校生になりプロ棋士になるために死に物狂いで囲碁の腕を磨いていた。 そんななか、祖父が持病の心筋梗塞で倒れてしまう。 竜也は病院に駆け込み、祖父は竜也に何か耳元で囁いた。 三日後、祖父は息を引き取り家族葬が行われた。 葬式の時に祖母のすすり泣く声が聞こえ、その声を聞いた竜也も思わずもらい泣きをした……。 半年後、竜也はプロ棋士になるため院生試験に合格しリーグを次々と勝ち抜き晴れてプロ棋士になった。 家に帰りベランダで夕陽を浴びて夢を叶えた竜也はふと亡くなった祖父の事を思い出す。 祖父は竜也がプロ棋士を目指している時に心臓発作が起きて入院して、いつも竜也の対局の勝敗を気にしていた。 祖父が危篤になった時に祖母に掠れた声でこう囁いたそうだ……。 「竜也は…プロになれる……ぜっ、たい」 祖母からその話を聞いた竜也は祖父と囲碁をした記憶がふと頭をよぎった。 祖父の気持ちも背負って竜也はプロ棋士の世界にもまれていくと決意した。 竜也は涙を流した、ーー。
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