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人間火炎放射機
最初に取りかかったのは、火吹きだ。これについては、やり方もネットに詳しく載っていた。ただ、かなり危険なものとなるので、プロの方の指導を受けながら行って下さい。とかいてあったが……。
引き籠りだった私にそんな伝手はない。
独学でやるしかないよね。
いきなり燃料を口に含み、火を放つ気は起こらなかった。
無理だろう……。
最初は水を口に含み、霧状に吹き出せるようになるまで、ひたすら練習を続けた。
中々、霧状にはならない。大きな水滴がボタボタと足元に毀れてしまう。これでは、実戦になったら、火の塊が下に落ちてしまい、事故に繋がりかねない。
とにかく綺麗に霧状に吹き切れるようになるまで、練習をするしかない。
時々、霧状に上手く吐けても飛距離が全くない。これでは、自分が炎に襲われてしまう。吹き切る力が足りないのか……。
また、息も直ぐに切れてしまい、口や頬も直ぐ痛くなってきて、練習を持続することが出来なかった。体力をつけるしかない。
身体を鍛えよう。走り込みや筋トレをするしかない。体力をつけなければ、先には進めないだろう。
それに、一日で出来るようになる訳がない。
私は翌日から、走り込みと筋トレを始めた。数年間の自堕落な生活を送り続けた、私の体は簡単に悲鳴を上げた。直ぐに息が切れてしまい、まともに走り続けることが出来ないのだ。
それでも、続けるしかない。必ず、あの危険な芸を身につけて、ステージに立ち、映像を見ているだけでは、見出すことが出来なかった境地に辿りつくのだ。
身体を鍛え始めた一週間はかなりきつかった。身体中が痛くなり、家にいる時は、何かをする度に、筋肉痛に襲われた。
今まで怠け続けた罰を受けているのだろうか。
そんな感覚にすら陥った時もあったが、続けることにより身体が慣れてきたのか、それ以後は痛みに悩む事はなくなってきた。走る距離も長くし、筋トレの回数も増やしていくことが出来た。
体力づくりに併せて、水を霧状に噴射する練習も続けた。
最初は、本の僅かな量しか、霧状にして吹き切ることが出来なかったが、普通に口の中に含む一口分の水量なら、霧状にして吹き切る事が出来るようになったのだ。
練習を重ねることにより、大量に含んで、霧状に連射して吹く事も出来るようになってきた。
水を吹く時は、息を吸わないようにもしている。息を吸ってしまったら、病院送りになる大事故に繋がりかねない。と載っていたから。
こうなってくると、実際に口に燃料を含んで、火を吹いてみようと言う欲に、誘惑をされてしまう。
まだ、水で練習を続けた方が良いのでは。
そんな気持ちもあったが、欲が勝った。人間とは、欲には勝てない生物なのだから、仕方ないよね。
私は、火を吹く準備に取り掛かってしまったのだ。
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