人間火炎放射機

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 身体を鍛えるようになってから、生活のリズムが良くなり、身体が少し軽くなったように感じる。  私はバッグの中に火を吹く為に必要な物を入れ、歩いて十分くらいの所にある鬱蒼とした林を目指す。この林を抜けると、少し開けた場所がある。ここなら、人が来る事も無いし、足元は普通に土なので、火の塊が下に落ちても大丈夫だろう。万が一に備えて、スプレータイプの消火器を準備した。  目的地に着き、深呼吸をする。バッグを開け、準備した物を取り出す。  蝋燭、チャッカマン、燃料を入れたペットボトル、消火器と目の前に並べて行く。  緊張をするなんて、かなり久しぶりのような気がする。  私は蝋燭を左手に握りしめ、チャッカマンで火をつける。これは、あのお姉さんの見様見まねだ。  微かに揺れる蝋燭の炎。蝋が溶けだし、左手に落ちて来て白く固まり始める。右手に燃料の入ったペットボトルを持ち、口に燃料を少し含む。  炎の先端を狙い、一気に霧状に噴射する!  目の前がオレンジ色に染まり、炎の塊が発生する。  成功だ!  そう想った刹那!  顔面が強烈な熱波に襲われる。  蝋燭と燃料の入ったペットボトルを放り投げ、身体を思いっきり仰け反らせて倒れ込む。  両手で顔を払う。  何とも無さそうだけど……。  暫く、身体が震え、じっと前を見つめるだけで、動くことが出来ない。  我に帰り、回りを見回す。  転がっていた蝋燭の火は消えていた。  ペットボトルに入っていた燃料は、半分に減っていた。放り投げた際に、毀れてしまったのだろう。  自分自身からやたらと異臭を感じる。  ふと、髪の毛を触ってみる。チリチリと音を立てながら、黒い粉のような物が落ちてきた。さっきの炎で髪の毛が焦げてしまったのだ。  慌てて、手鏡で顔を確認する。顔が無事だったことに一安心する。  もう一度、やってみる気が起きない。両脚もまだ、ビクビクと震えている。  私は、荷物をバッグの中にしまい込み、今日は家に戻ることにした。  火を吹いた時、風は自分に向かって吹いてきてはいなかった。噴射する馬力が足りないのだろうか。とにかく、もっと噴射の練習をしなければ駄目だ。  これでは、話にならない……。  始めての火炎放射の後、口の中に違和感が暫く残っていた。燃料の選び方が悪かったのかもしれない。それと、髪の毛を触るとチリチリと音をたて、黒い粉が落ちてくることが、何日か続いた。  髪の毛が炎でかなりやられたみたいだ。大事故に繋がらなくて良かったと、思うしかない。考えられるミスは噴射する馬力の無さだ。これは、身体を鍛えながら、毎日、水で練習をするしかない。  暫くは、水を使っての練習に没頭した。噴射する飛距離も日に日に伸びて行く。ある程度の量なら吹き切れるようになったし、大量に含んでも、息を吸わずに連射が可能になった。  今度こそ行けるかな。  いや、もっと水を使った練習を積むべきだ。  自分の甘い考えを正していく。  もっと自信を持てるようになってからだ……。  実は、他にも練習をしている芸がある。ボールジャグリング、悪食、チェーンを鼻から入れて口から出す。  今の所、これらの芸を併せて練習をしている。  今は、水を霧状に噴射する練習に取り組んでいる。この練習の後は、一向に進んでいない悪食に挑まないとね……。
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