頼れない

1/1
前へ
/44ページ
次へ

頼れない

 だから私は家族の誰にも頼れない。誰にも頼れない…だから誰にも相談をすることなく生きてきた。  早く家を出たかったが、まとまったお金もなく、保証人になってくれる人も家族にはおらず、できなかった。  仮に父に話をしても、父からあの女に通達が行くに違いないー…… 「保証会社もあるけど…ただ、いま貯金どれだけあるかな?家賃の6ヶ月分はないと厳しいなあ」 「貯蓄額の分かるもの、あるかな?例えば通帳とか…  え、これが全財産!?これじゃあ厳しいなあ」  ……部屋も借りられない。  そんな中、風俗バイトのスカウトをされ、安易に風俗バイトを始めてしまった。 「ん?おめぇ、一人暮らしをしてぇのか?」  たまたま社長と雑談する機会があり、そんな話になった。 「ウチには寮があっからよ。入りたくなったらいつでも言え、なっ?」  それから社長はよく店舗に来ては、待機室で私に話しかけてきた。 「おめぇ、なんかいっつも暗いなぁ。何があった?何でも話せや、聞いてやっから!」 「ん?親とうまく行ってねぇのか?そんならおめぇ、それこそ寮に入れや!」  社長は話してみると、口はあまり良くないかもしれないが、気さくで寄り添ってくれるような面もあった。  ちなみに店長も似た感じだった。 「俺も親とうまく行かなくてよォ。18で家出したんや」 「ここに来る女はわけありの奴が多いからなぁ」 「まぁ親との関係がすべてじゃねぇからよぉ。俺がアユの親代わりになってやるわ!」  社長はやたら気さくにそんなことを言い、店長にはもっとシフトを入れるように言われた。 「おいアユ。もっとシフト入れんのか?これじゃあいつまで経っても客つかねぇぞ!」  そんなことを言われ続けたが、男性経験もなく人と話すことが極度に苦手な私には、これが限界だった。  汚い、汚い……
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加