毒蜘蛛

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毒蜘蛛

 ーー毒母。  私の母を揶揄するのなら、まさしくその一言に尽きる。若しくは毒蜘蛛(どくぐも)とも言える。   は、毒蜘蛛のように大きな巣を張り巡らせ、私を捉えてしまう。私は逃げられずに見えない巣に捕らえられ、食われ続けた。なぜなら私は、あの女が毒母に該当するなんて、気づく術もなかったのだから。  幼い子どもにとって家庭は自分のすべてとなり、親から「捨てるよ!」と言われると間に受けてしまい、捨てられないように良い子になる。子どもにとって親は神であり、家庭は自分を守ってくれる唯一の場所……  そう、まだ幼い子どもは児童相談所も市役所もイメージできないし、そもそも存在を認知していない。  幼い子どもは、どれだけひどい親であっても慕い、嫌われないように必死で「良い子」であろうとする。  例えば親に「喋るな」と言われ続けると、口を真一文字に結び、喋らない。  仮に、九九を覚えろと言われれば、例え5歳でも必死に覚えようとする。  子どもは健気だ。  健気だからこそ、悲しい結果を招く事例も多い。    今でもたくさんの子どもたちが、毒蜘蛛のような親に捕らえられ、逃れることもできず苦しんでいるー……
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