17人が本棚に入れています
本棚に追加
1.
目標を視覚内に補足。
赤外線暗視モードを起動したまま接近する。
戦闘用サイボーグであるわたしにとっては、夜の暗闇も昼日中とさほど変わりない。
「ひ……ひぃっ!」
熱源、つまり侵入者は怯えたように腰を抜かしている。ちょっとばかり可愛そうだが、こいつがやろうとしたのは空き巣狙いの泥棒行為だ。わたしがねぐらにしているこの廃墟──かつては研究施設の類いだった──は、近くの里の者は好んで近づこうとはしないのに、大した度胸だ。
けれど、選んだ場所が悪かったな。
命を奪うまではしないけれど、ちょっと怖い目を見てもらおうか。
「おい、そこの」
久しぶりの音声会話とあって、声がおかしい気がするが、まぁいいだろう。
かえって迫力は増すはずだ。
「聞こえているな。ここはわたしの……」
しょろろろ、と、細い管から液体が漏出するような音で、わたしの言葉は遮られた。
センサーがごく微量のアンモニアを検出。
失禁したのだろう。
「汚すな。ここはわたしの家だ。壊れかけているし、散らかってはいるが」
「あぅぅ」
腰を抜かして震えたままの侵入者を、左腕部マニピュレータでつまみ上げる。
2.
「ん?」
あれ、随分と軽いな?
目の高さまで持ち上げてから、視覚を可視光/増光モードに切り替える。
「動物? いや、それにしては……」
最初のコメントを投稿しよう!