屑鉄の魔女と狼の少年 ─ 『#魔女集会で会いましょう』より ─

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 身長110センチ弱、6、7歳の子どもくらいの大きさで、一見すると犬か何かのように見えるけれども、手足のつくりは二足歩行に適した人間のそれに近い。  顔や手足を含む全身はくまなく灰色っぽい毛で覆われている。腰辺りにぼろきれ同然の布を巻いている他には、首にはやせ細った身体には不似合いなほど、頑丈そうでごつい首輪を付けている。 「クジンの子か? この辺りでは珍しいな」  世界が滅茶苦茶になる原因となった世界規模の大戦が起こる以前、とある国と大企業が提携して使役用の人工生物の開発を推し進めていたらしい。  ウルフドッグと人間の遺伝子をベースに作出されたそれらは、最初のうちこそ厳重に管理されていたものの、長引く戦争で疲弊した結果、杜撰な管理によって少なくない数が管理下から逃れ、野生化したという。    海を隔てて遠く離れた地では、 クジン(狗人)と名乗るようになった彼らのコミュニティがあると聞くが、わたしが暮らすこの近辺では珍しい。まったくいないという訳ではないが、人間とはかけ離れた見た目の彼らは奇異な目で見られることが多く、この辺りでの暮らしは楽ではないと聞く。 「ぅ、ぅぅ」  わたしが左腕部マニピュレータでぶら下げたクジンの子は、力なく呻きながら小刻みに震えている。  走査の結果、性別は男と判明。
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