屑鉄の魔女と狼の少年 ─ 『#魔女集会で会いましょう』より ─

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1.  目標を視覚内に補足。  赤外線暗視モードを起動したまま接近する。  戦闘用サイボーグであるわたしにとっては、夜の暗闇も昼日中とさほど変わりない。 「ひ……ひぃっ!」  熱源、つまり侵入者は怯えたように腰を抜かしている。ちょっとばかり可愛そうだが、こいつがやろうとしたのは空き巣狙いの泥棒行為だ。わたしがねぐらにしているこの廃墟──かつては研究施設の類いだった──は、近くの里の者は好んで近づこうとはしないのに、大した度胸だ。  けれど、選んだ場所が悪かったな。  命を奪うまではしないけれど、ちょっと怖い目を見てもらおうか。 「おい、そこの」  久しぶりの音声会話とあって、声がおかしい気がするが、まぁいいだろう。  かえって迫力は増すはずだ。 「聞こえているな。ここはわたしの……」  しょろろろ、と、細い管から液体が漏出するような音で、わたしの言葉は遮られた。  センサーがごく微量のアンモニアを検出。  失禁したのだろう。 「汚すな。ここはわたしの家だ。壊れかけているし、散らかってはいるが」 「あぅぅ」  腰を抜かして震えたままの侵入者を、左腕部マニピュレータでつまみ上げる。 2. 「ん?」 あれ、随分と軽いな? 目の高さまで持ち上げてから、視覚を可視光/増光モードに切り替える。 「動物? いや、それにしては……」
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