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さすが帝都に店を構えるだけの事はある。しばらくこの品でいいのではと思ったが、どうやらお勧めは毎日違うようなので、しばらく通うのも良いかも知れない。
「うまかった…すみませんお会計を」
「は~い。今日のおススメが銀貨2枚、パンが中銅貨1枚、果実酒が中銅貨1枚になりま~す」
――――な、なにっ!?
どうやら俺は銅貨と銀貨を見間違えていたらしい。
何という油断! 戦なら完全に致命傷を受ける程の失態ではないか! パンと果実酒もそれぞれでマイルズの宿の食事1食分だし、完全に帝都の物価を侮った! 帝都の食堂は皆こうなのか!?
あれだけ美味かったのだから文句を言うつもりは無いが、流石に1日2回通える金額ではない。そんな事をすればすぐに金が底をついてしまう。
俺はなるべく顔には出さぬよう銀貨2枚を差し出しながら、せめてもと、魚介が新鮮な理由を聞いてみた。
「あの、どうして内陸の帝都でこのような新鮮な魚介が手に入るのですか?」
「北部の港町シーモイから氷魔法で凍らせてここまで運ばれてくるからですよ。その代わり、お値段は見ての通りになっちゃいますけどね♪」
スルト村からさらに北東に行くと、シーモイと言う街があると聞いたことがある。母上が稀に魚介を食卓に出してくれていたが、こんなに高かったのか。申し訳…いや、ありがとうございます、母上。
「なるほど、勉強になりました。美味しかったです、ご馳走様でした。」
「いいえ~、またのご来店お待ちしておりまーす!」
氷魔法で凍らせて鮮度を維持する…か。輸送の時間を考えると、魔法陣を使っているのだろう。氷が溶けるごとに氷魔法を放つわけにはいか無いだろうし。そんな魔法の使い方もあるとは、いつか氷魔法を覚えておいても損は無いな。妖のような名の猫又亭も覚えやすいので、ついでに覚えておこう。
少し軽くなった金袋を引っ提げ、再び街に繰り出した。
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