第42話 帝都アルバニアⅡ

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 宿を確保して荷物を置いた。宿の代金が1泊朝食付で銀貨2枚だったのが気になったが、帝都なら多少高くても仕方がないと思い直す。  金袋だけ携えて俺は街を散策していた。かなり離れたとこに皇城がある。城付近はマイルズと同様に、貴族の別宅が並ぶ貴族街だろうから入れないが、それは別に構わない。  どうやらアルバニアは皇城を中心に周りに貴族街、そこから放射線状に街が形成されているようだ。マイルズの様に住宅区、商業区、工業区に分かれている訳ではなく、すべてが入り乱れて建物が立っているようだが、街の景観は綺麗に舗装された道路や街灯で統一感が醸し出されており、雑多な印象どころか、整然とした美しい街並みである。  とりあえず腹ごしらえにと食堂に入る。中は人でにぎわい、給仕がいそいそと動き回っていたが、待つことなく席に案内されて品書きを見る。すると表書きに大きな文字で『今日のおススメ。”超新鮮!海の幸の満足アクアパッツァ”』と書かれていた。銅貨2枚でお勧めなら食べない手は無い。  ただ、内陸にある帝都で本当に新鮮な海の幸なのか? と若干疑ったがそれはいい。アクアパッツァと言うのも何かわからない。何かの魔法かとも思ったがそれも置いておく。とにかく食う。文句はそれからだ。 「そうこそ猫又亭へ! ご注文はお決まりですか?」 「あの今日のおススメを頂けますか? それとパンと果実酒を」 「承りました! 少々お待ちくださいねっ!」  少し待つと、テーブルの上にドンと魚や貝をメインに野菜がちりばめられた大皿が出て来た。立ちのぼる湯気からは、潮の香りが漂う。野菜も赤、緑、黄と色鮮やかで目でも味わえる。とても旨そうだ。アクアパッツァという名の由来は謎だが、美味けりゃどうでもいい。  一口食べると、新鮮な魚と貝のうま味が口の中に広がった。  うまいっ!  手に持つナイフとフォークが止まらない。次々と口に運び、時折パンを大皿に浸し、海鮮のエキスを吸わせ頬張る。パンも柔らかく、マイルズの騎士団宿舎で出て来たパンにも劣らない。最後に贅沢に果物を絞って作られたであろう果実酒をゴキュっと飲み干し、ごちそうさま。
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