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「んで、魔法師団には誰か伝手があるのか? ジンなら俺が声を掛けてやるぞ?」
「え? 伝手が必要だったのですか?」
「そりゃあな。別に魔法師団は商売でやってる訳じゃない。建前としては『帝国の繁栄に役立てられる者』ってのが基本だ」
「そうだったのですか…いや、よくよく考えたらそうですよね。あれだけの魔法陣、ならず者の手に渡るのは避けなければなりません。ベルモッドさん、申し訳ありませんがお願いできます―――あっ」
胸元のガラスのカードの事を思い出し、ベルモッドさんに見せてみる。
「ベルモッドさん、これがあれば作って頂けますかね?」
ベルモッドはジンの胸元に光るガラスのカードを見て、傾けた杯の手を止める。
「それはアジェンテの!? ゴホゴホッ! っ、お前ってやつは…会ってから何回俺を驚かすんだ」
「す、すみません。あの、それで…大丈夫でしょうか?」
「ああ、アジェンテなら全く問題無い。陣魔空間の作成は魔法師団本部で行われてるはずだ。入り口の衛士にそれ見せて通してもらえ。場所は冒険者ギルドの通りから皇城に向かった右手にある。建物がデカいからすぐに分かるはずだ」
「わかりました、ありがとうございます! 早速行ってみますね!」
その後、ベルモッドさんお勧めの武具店も教えてもらい、解散となった。
帰り際、支払いをしようとした俺をベルモッドさんは手で制し、『ここでお前に出させちゃ中隊長として恥ずかしい』と言って、2人分の支払いを済ませてくれた。
「ベルモッドさん! またお会いできるのを楽しみにしています!」
「またなジン! 元気でやれよ!」
ベルモッドにはジンの走り去る後ろ姿が輝いて見えた。
「ふっ、とんでもない奴だよ。全く…」
そして、今日という日が特別な日になった気がした。
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