第43話 帝都アルバニアⅢ

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 荷物を宿まで取りに戻り、大金貨30枚をバンクから引き出す為、冒険者ギルドへ向かう。入るなり受付から声がかかり、その窓口まで行くと、昨日色々教えてくれた受付の職員さんだった。 「こんにちはジン君。ちょっといいかしら?」 「はい、なんでしょう」 「この依頼をジン君に受けて欲しいの」  そう言うと引出しから1枚の依頼書が出てきた。張り出す前の依頼書のようだ。 「これは…カーネル卿アルバニア別邸の木の移動作業?」 「ええそうなの。今朝出された依頼なんだけど、難易度は下級以上でジン君にも受けてもらえる依頼よ」 「おおっ! それは有難いです! ですが貴族様のお家ですか…私で大丈夫でしょうか?」 「君ならきっと大丈夫よ。別にカーネル卿と話す機会なんて無いでしょうし、仕事は管理人さんの指示通りに植わっている木を移動させるだけ。なんでも庭の景観を良くする為らしいわ。木を移動させるには、周りを掘って木の根元から引き抜かないといけないから、強化魔法を使える人じゃないと難しいのよ。期間は3日。報酬は見ての通り金貨2枚!」  木を移動するだけで金貨2枚!?  それに強化魔法で引っこ抜くより木魔法で移動して()()()()方がかなり楽では? これを逃す手は無いな。 「やらせて頂きます」 「ほんと!? ありがとー! じゃあ早速受付処理しちゃうから、ギルドカード出してもらえるかな?」  言われた通りギルドカードを出すと手際よく処理され、カードと地図を受け取る。そこでふと大金貨30枚の事を思い出し、ギルドカードをもう一度差し出した。 「あの、バンクから大金貨30枚を出して頂きたいのですが」 「えっ!? は、はーい。ちょっと待ってね!」 (ホ、ホントに入ってるわ…可愛くて強くてお金持ち。もう求婚しようかしら。はっ! だ、ダメよ! 相手はまだ15歳! さすがに引かれるわ!)  目の前に10枚ずつ綺麗に積み重ねられた大金貨を金袋に入れ、ギルドを後にする。 「では早速行ってきます! えーっと―――」 「ニーナでいいわ♪」 「ニーナさん!」  笑顔で挨拶をした。わざわざ俺の為に依頼を残してくれていたのだ。今後も世話になるかもしれないし、少しは愛想よくせねば。  ギルドの扉を開けたら受付の方からガタンと音が聞こえたが、気にせずギルドを出た。
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