第44話 スクエアガーデン

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 魔法師団本部前に着いた俺はガラスのカードを見せて衛士に通してもらい、応接室で茶を頂きながら担当者を待っている。本部と言うだけあって、建物はとても立派だ。魔法師団は戦いだけでなく、魔法の研究開発、優秀な魔法師の育成なども行う帝国唯一の魔法師専門の教育機関らしく、ここの卒業生は皆優秀な魔法師となって、貴族に仕えたり騎士団や魔法師団に入ったりするらしい。  帝国が大陸最大の版図を有する理由は、こういう所からも見て取れる。 「お待たせして申し訳ない。若きアジェンテ」 「とんでもありません。私こそお忙しい中ご対応頂き感謝しております。改めてジン・リカルドです。お見知りおきを」  出て来たのは、少し白髪の混ざった独特の雰囲気を纏う初老の男。 「お若いのに見事な立ち居振る舞い。私はパルテール・クシュナーと申します。この魔法師団で魔法研究を主にしています。早速本題に入りましょう。陣魔空間の生成をお求めのようで」 「その通りです。私のような者にも扱えるのかは分からないのですが」 「魔法陣を描くことが出来れば、問題なく扱うことが出来ますよ。アジェンテである君に資格や人柄をあれこれ問いません。早速試してみましょうか」 「あ、あの代金は…」 「ああ、そこに置いておいてください。有り難く魔法研究に活用させて頂きますよ」  この関心の無さ…やはり金は大して重要では無いらしい。  ベルモッドさんの言う通り、帝国繁栄に役立てる事が出来るかどうかが重要なようだ。  応接室を出て、陣魔空間の魔法陣が設置されている研究室のような場所へ案内される。目の前には複雑怪奇な大きな魔法陣が設置されていた。 「これは途方もない…一体どれだけの魔法陣を組み込んでおられるのでしょうか」 「ははっ、皆最初は驚きます。なんせ私が5年の歳月をかけて組み上げたものですから」 「な、なんと! 魔法陣はクシュナー()()のご功績でしたか! 御見それいたしました!」 「いいえ。別に自慢したいが為に組んだものではありません。研究の果てに辿り着いただけの事です。さぁ、魔法陣に触れて君の魔力を流してみて下さい」  言われた通り魔法陣に魔力を流す。  すると、流した魔力が魔法陣により変換され、こちらに逆流してくる感覚に陥る。この重たい感覚、どこかで…
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