第44話 スクエアガーデン

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「この感覚。ダンジョンに似てる?」 「なっ!? 分かるのかい!?」  先生が突然大きな声を出して驚いている。 「え、ええ。先日、初めてダンジョンに潜った際に感じた、魔素ではない何かの感覚に似ていると感じました」 「す、素晴らしいよジン君! あの感覚に気付けるものが私以外にいたとは! では君はその感覚を陣魔空間にどう結び付ける!?」  逆に驚いて固まっている俺に先生は気付き、咳払いを一つし続ける。 「すまない、突然興奮して驚かせてしまったね。その感覚を感じたならもう陣から離れて大丈夫だ。よければ聞かせてくれないか、先程の事」  俺は今感じた感覚とダンジョンで感じた感覚を擦り合わせ、持ちうる情報を組み合わせ思案する。詳しい事は勿論わからないが、考えている内に繋がりのありそうな情報に行き着いた。 「そうですね…この魔法陣は使用者の魔力をダンジョンと同じ魔素に変化させた後、その変化させた魔素を使って、使用者とは異なる魔力に変換しているのではと推察します。最初重く感じたのは自分の魔力では無い、異質な魔力が流れ込んできたからだと思います」  ここでチラリとクシュナー先生の様子を伺う。 「…続けて」 「はい。その異質な魔力は私達が普段扱う魔力とは違い、例えば…そう、ダンジョンのみで扱える帰還魔法陣のような、特別な魔法陣を発動する際に使用されるものでは無いでしょうか?」 (という事は…)  自分で話しながら次々と推論を立ててゆく。そばで見ている先生は俺の思案顔をじっと見つめていた。 「…そうか。この魔法陣はダンジョンの帰還魔法陣の応用と言えるのかもしれない。ならば、帰還魔法陣とは発動と同時に目には見えない空間を作り上げ、空間の入口と出口、つまり魔法陣同士を繋げているのか。入口から出口は下りの傾斜であると仮定すれば、出口から入口に移動できないのは必然。さらに、という記憶が無いとなれば、自我の無い状態…例えば石ころが坂を転げ落ちるのと同じ事という事になる。しかも一瞬で移動している事を考えると、空間内は時が止まっている可能性も? いや…自我が無ければ時の流れを認識する事など出来ない。この部分は分かり様が無いか―――」  ブツブツと喋りながら、ふと側に居るクシュナー先生を置き去りにして考え込んでしまっている事に気付いた。
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