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「はっ! すみません…この魔法陣ではなく帰還魔法陣の事に思案が変わっていました」
「一向に構わない! どころか、原理に行き着くには必要な考察だよ。さぁ、ここまでの考察で出し得る君の答えを聞かせてくれ!」
「はい! つまり、帰還魔法陣は肉体を一瞬で別の場所に飛ばしているように見えるが、その実、別の一本道の空間を作り出すと同時に魔法陣内の者をそこに送り込み、入った者はそこから出口に転げ落ちているに過ぎない、という事です」
帰還魔法陣の仕組みを推論立てて、本題の陣間空間につなげる。
「すなわち、この陣魔空間の魔法陣は出口の無い空間、言い換えるなら出入口が同じ空間を作り上げているという事です。傾斜ではなく平坦に」
「……す、す、」
「?」
「素晴らしいぃぃぃっ!」
先生の様子がおかしくなった。
「ジン君! 今すぐ私と同じ研究職に就くべきだ! その若さでありながら、少ない情報を元によくそこまでたどり着いた! 君みたいな逸材が突然現れるなんて私はツイている! はーっはっは!」
「あ、いえ先生、私は…」
陣魔空間の存在があればこそ出来た推察であり、自分は冒険者として世界を見て回りたいので研究職は勘弁してほしい旨を滔々と話し、何とか興奮するクシュナー先生をなだめた。
「むぅ、そうかぁ…非常に残念だが…いつか君は世界の理に近づけるのかもしれないな。まぁいい。折角君と言う逸材に出会えたんだ。少しは私の研究を聞いていく気はあるかい?」
「はい! もちろんです!」
パルテールが陣魔空間の研究の過程で辿り着いたものは、ジンにとって非常に有意義なものだった。
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