第45話 原素

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第45話 原素

 俺がダンジョンで感じた魔素の違和感、先生はそれを『原素』と呼んでいた。原素の存在を明確に意識したのは15年前。スルト村に残された『神獣の残滓(ざんし)』と呼ばれる現象と、その神獣が置いていった一つの石のお陰だという。  先生が体験した神獣の残滓は、魔素から生成される魔力によるものではなく、別の何かだと先生は考えたらしい。そこでダンジョンに存在する魔素、ここで言う原素によって作られた魔力による魔法、もしくは現象ではないかという事に行き着いたそうだ。  同時にその神獣が置いていった石には魔力核らしきものが混ざっていたが、どうも自分が知る魔力核とは別の何かのように感じたという。その石は現在国宝なので、皇帝の居城であるクルドヘイム城から持ち出す事は出来ないらしいが、先生はその石に混ざっている発光体は通常の魔力核ではなく、原素から出来た魔力核なのではと推察したらしい。  原素という、魔素とは違う力の存在を定義した先生は、次に帰還魔法陣に目を付け、その研究に没頭したという。5年という歳月をかけて、人が持つ魔力を魔素から原素へ、その原素を用いて魔力へ変換することが出来れば、ダンジョン内でのみ発現する帰還魔法陣を外に持ち出すことが出来ると考えた。  何度もダンジョンへ足を運び、苦心の末に完成したのが陣魔空間を作り出す魔法陣という事らしい。だが、この陣魔空間の魔法陣とダンジョンの帰還魔法陣には、全く異なる面があるという。  それは魔力干渉を起こすか否か。陣魔空間はその作成者以外の魔力を持つ者は、内部に干渉する事が出来ないというものだった。要するにすり抜けるという事だ。確かにダンジョンの帰還魔法陣は、魔力を込めた者以外も同時に空間に入っている。
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