855人が本棚に入れています
本棚に追加
すっかり研究話に没頭してしまったが、元々の目的である収納魔法を手に入れた。一度複雑怪奇な魔法陣に触れ、魔力の逆流を受けた後、先生に教えてもらった簡易版の魔法陣を描くと収納魔法は発動するという。
魔法陣に込めた魔力の分だけ空間は広くなり、使用者自身ならいつでも出し入れ可能。空間内に重さや時間の概念は無いそうなので、仮に生肉を入れたとしても腐ったりすることは無い。俺が最初に想像した通りの、完璧な仕様だった。
やったぞ! これで旅の荷物が大幅に減らせる!
早速、金袋以外を収納魔法に出し入れしてみると、自由自在だった。内部の容量はまだ分からないが、これから徐々に分かっていくだろう。
上機嫌に魔法師団本部を後にし、冒険者ギルドへ向かった。
「こんにちはニーナさん」
ギルドの窓口に行くと、まだニーナさんがいたので声を掛ける。
「あ、ジン君! どういうこと!? もう依頼人さんから完了の報告が来てるんだけど! しかも特別報酬までついて!」
興奮している様子のニーナさんは捲し立てる様に詰め寄ってきた。
「ああ、本当に付けて頂いたんですね。有り難い事です。管理人さんが思っていた以上に早く終わったからですかね」
「依頼期間の3日どころか、依頼から半日も経たずに終わったんだからそれは付くわよ! 相手は貴族なんだし!」
賑やかなニーナさんはさておき、俺はギルドカードを差し出す。何やら訳が分からないといった様子だったが、依頼は完了である。この依頼達成でランクアップの為、新たなギルドカードへの更新手続きに入っているようだ。
少し待っているとニーナさんに呼ばれ、新たなギルドカードが渡された。今度は青に”D”と刻まれたカード。これで中級者ランクの仲間入りを果たした。
「報酬も倍の金貨4枚! お疲れさま! そしてランクアップおめでとー!」
パチパチパチ、と手を叩いて自分の事の様に喜んでくれている。
有難い事だが、なんだかギルドに来る毎に馴れ馴れしくなっていくニーナさんに少し困惑する。
別にいいんだけど…なんかこう、視線が熱い。
これで事前に帝都でやりたかった事は終わった。ゆくゆく次の目的を決めるため、ニーナさんに地図が無いかどうか聞いてみる。
スルト村からマイルズ、帝都と進んできたのは縁があっただけの事。ここからは目的地を見つけて旅を進める予定だ。
最初のコメントを投稿しよう!