第46話 黒竜飛来

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「全員聞いてくれ」  声の主はアルバニア冒険者ギルドマスターのアイザック。眼鏡を掛けた壮年の、いかにも管理職に向きそうな雰囲気だが今の気迫は冒険者そのものである。 「たった今騎士団より連絡がありました。南西グレイ山脈から猛スピードで黒い竜がこの帝都に向かっているとの事です。大きさと特徴から黒王竜(ティアマット)の幼体と推定されました。王竜種は頭が良く、テリトリー外の獲物をむやみに襲ったりしないはずですが、幼体は別です。腹を空かせ我を忘れて人でも食べに来たのでしょう」 「こ、黒王竜!?」 「S級じゃねぇか!」 「なんで冒険者ギルド(ここ)に話が来るんだよ。騎士団(あいつら)にやらせりゃいいじゃねぇか」 「騎士団と魔法師団は何してんのよ!」 「幼体っつってもバケモンクラスには違いねぇ…」  ざわつく冒険者と職員達。 「静かに! 騎士団と魔法師団は今いる団員を二手に分け、帝都防衛隊と討伐隊を編成している最中です! もし帝都決戦となると街に大きな被害が出ます。ですが、ここからが本題です。飛来を確認して暫くした後、竜は森で墜落()()()()()ようです。騎士団監視員の報告では、森で暴れている巨体が確認できている事から、まだ生きています」 「どういうことだ? させられた?」 「墜落して暴れてるって事は…」 「もうわかりますね? 討伐隊がまだ出立していない状況で竜が暴れているという事は、今この瞬間も我々と同じ()()()が戦っているという事ですよ」  アイザックの一言一言でニーナの顔が次第に青ざめていく。南西の森にはジンとユーリがいる。 「騎士団の編成は待っていられません。おそらく騎士団も今戦っているのが冒険者だとわかり、早々にこちら(ギルド)に情報を渡したのです。我こそはと言う人がこの場に居たら、私に続いて下さい。今すぐに仲間を助けに行きます!」  黒王竜と聞き、冒険者達は簡単に手を上げることは出来ないでいる。幼体とは言え、中級ランク程度では全く敵う相手では無いのだ。王種とはそういう存在である。  そんな中でも数名が手を上げて、出てゆくアイザックの後を追っていった。  大騒ぎのギルド内。ニーナの脳裏には最悪の事態が巡っていた。 「ま、まさか…ジン君っ!」
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