第46話 黒竜飛来

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「はぁ…やっていけるかなぁ…」 「大丈夫ですよ。ユーリさんは体力がありますし、しっかり基礎から槍を学んでいけば、今日の依頼程度なら容易くこなせるようになると思います」 「……うん、そうだね。村を出た時点で、もう後には引けないんだ。コツコツやっていくよ」  ニコッと笑うジンにユーリは安心感を覚える。戦いの才能だけではない、人を引き付ける魅力も彼は持っているのだと、ユーリは半ば呆れる心持ちでいた。  ゴブリンの討伐証明は魔力核、一角兎は角なのでギルドで売る分の肉を除き、二人は一角兎の肉にありついていた。肉と香辛料(スパイス)の芳醇な香りが辺りに満ちている。  香辛料は決して安いものではない。それを常時ストックしているジンは、ソロならではの金回りのようだ。しかも、それを惜しげもなく組んだばかりのメンバーに振る舞うのだから、ユーリからすればその器量も流石と思える。  ふとユーリが肉を半ば食べかけていたジンを見ると、どうも様子がおかしい。南西の空をじっと見つめている。 「どうしたんだい?」  聞くとジンは勢いよく立ち上がり、 「……何か近づいてきます―――っ!? あれは!!」  空に黒い点が現れ、それが何かを確信したジンは即座に行動に移した。 「ユーリさん! 今すぐギルドへ戻って伝えて下さい! 竜が来たと!!」  強化魔法を覚えたばかりのユーリには竜の姿はまだ見えないが、ジンの只ならぬ雰囲気に押されすぐに立ち上がった。 「竜だって!? わ、わかった! ジン君はどうするんだい!?」 「徐々に高度を落としていますし、この方角は帝都に向かっています! その前に竜の足止めをします! 早く行ってください!」  そう言うと同時にジンの身体が緑に輝き、南西の方角に消えていった。 (竜を止める!? 一人で!? 無茶な!) 「…くそっ!」  ユーリにはジンを止める事も、ましてや手伝う事も出来ない。  ジンの言う通りにすべく必死に脚に強化魔法をかけ、全力で帝都へ駆けた。
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