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第47話 ドラゴンキラー
俺は森の中を疾走する。竜の飛行ルートの真下に入り、引きずり下ろす為だ。やはり竜は徐々に高度を下げ帝都の方向へ飛んでいる。
(行かせるか!)
「―――樹霊の縛!」
竜の眼下の木がウネウネと動き始め、枝という枝が竜を搦め捕ろうとその触手を伸ばす。
『ギャオォォォォ!』
そして竜を引きずり降ろす事に成功、目の前に墜落して暴れまわっている。今こそ攻撃のチャンスと見るが、黒竜は全身が黒い鱗で覆われおり刃が通るかは分からない。
(まずは一太刀浴びせる!)
「いくぞ!」
未だ木に拘束されている竜に対し、全力で斬り掛かった。
ドギャッ!
舶刀二本の斬撃は、金属でも皮膚でもない奇妙な感覚と共に跳ね返され、その鱗には傷一つついていないようだった。
攻撃された黒竜は俺という敵を認識し、自身を拘束している木に向かって口を開くと、とてつもない熱量を収束させた。
「まずい!」
ドゴァァァァァ――――
離れたと同時に凄まじい炎が竜の口から放たれ、発射方向の木が一瞬で灰になる。竜は拘束から逃れ、長い鱗尾で辺りを薙ぎ払うが、跳躍してこれを回避。同時にもう一度斬撃を加えてみるが、再度跳ね返された。
「鱗はダメか!」
だが、俺の攻撃も入らないが、竜も俺の動きに付いて来れていない。何というか場当たり的な攻撃が多く、動きも直線的でその大口で噛みついたり、鱗尾を振り回して範囲攻撃をしているが、上下の追撃が無いので、がむしゃらとも言える攻撃は俺には当たらない。
纏わりつく小さな敵に業を煮やした竜は空に飛び上がり、炎を吐き出す態勢に入る。先程より溜めが長い。明らかに辺り一帯を焼き尽くさんとしている。
食らえば一溜りも無い。炎を吐き出さんとググっと首を仰け反らせた竜の真下に入る為、全力で駆ける。真下なら竜の炎の直撃は避けられるだろう。
とその時、翼を広げた竜を見て俺は鱗の無い部分を発見した。どうやら翼の付け根は鱗で覆われていないようだった。
竜の真下に入ると同時に跳躍、風魔法を爆発させて空中で静止している竜の足元まで迫り、舶刀を逆手に持ち替えた。
眼下に居たはずの標的がいつの間にか自分のすぐ側まで来ていた事に驚いた竜は、慌てて足元に居る俺へ向かって炎を吐き出そうとするが、足元を通り過ぎ懐まで入った俺をついぞ見失った。
瞬間、
「うぉぉぉぉ! ―――流気旋風!」
ズバン!
『ギャァァァァン!』
「よし! 通った!」
口から炎をまき散らし、片翼を失った黒竜は回転しながら地に落ちる。所構わず吐き出された炎によって、戦いの場周辺は炎に包まれた。
「もう飛べないだろう! こっからが本番だ!」
翼を切り飛ばされ怒り狂う竜は、向かってくる小さな敵を全力で迎え撃つ。
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