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「ご心配おかけして申し訳ありませんニーナさん。以後気を付けます。もう大丈夫なので、そんなに泣かないで下さい」
「ニーナ君…ジン君が困っていますよ。それに貴方が窓口にいないと他の皆の負担が増えてしまいます」
「アイザックさん!」
俺がニーナさんの対応に困っていると、ギルドマスターのアイザックさんが後ろから助け舟を出してくれた。帝都に来てからの半年間、アジェンテとして何度も顔を合わせている人物だ。
「うぐっ…わ、わがりまじた…ジン君まだあどで」
トボトボと部屋を出ていくニーナさんを見送り、アイザックさんがため息をついた。
「はぁ…すまなかったねジン君」
「いいえ、心配して下さるのは有難い事ですから」
「そういってもらえると助かるよ。でも実際、傷はかなり深手だった。それは忘れない方がいい。いくら強化魔法が得意とはいえ、今回のような戦い方はお勧めしない。それは覚えておいてくれ」
「はい。申し訳ありませんでした…」
「反省してくれればそれでいい。君が救った命は多い。責めるのはお門違いと言うものだ。まさか、君が黒王竜と一対一で戦えるほどの力を持っていたとはね。色々話さなきゃならないんだけど、話は出来るかい?」
「ええ、綺麗に治して頂きましたので、もう大丈夫です」
アイザックさんの話では、俺が倒した黒い竜は、帝都南西にあるグレイ山脈から飛来した黒王竜の幼体であった事、竜の炎で起きた森林火災は騎士団と魔法師団の尽力で無事収まった事に加え、王種の事など色々教えてくれた。
特に王種に関しては今後も気を付ける様にと注意を受けた。魔獣にはギルドが冒険者向けに強さをランク付けしているが、王種はすべからくS級指定されているらしい。
有名どころでは俺が倒した黒王竜、そのほか銀王獅子や緋王熊といったのがおり、王種とはその種の頂点を跋扈する魔獣を指すとのことだ。
「あ、あれで赤子だったのですか…成体は恐ろしいほどの力を持つのでしょうね」
「ああ。成体の討伐難易度はS、最高ランクに位置付けられている。幼体でも難易度はAだよ。人的被害が全く無かった事は奇跡に等しい。君には感謝しなければならない。帝都を代表してお礼を言わせてくれ。ありがとうジン君」
「運が良かっただけですよ。最初は暴れ狂うだけだったのですが、途中から竜が私を敵として認識してくれたからこそ、最後まで戦えました」
「なるほど。君はそっちの人間か」
「?」
「いや何でもない。安心しただけだよ。それよりここからが割と本題だったりする。今回の討伐で、君に陛下より感状を賜っています。それと国民と帝都を守った報奨金として白金貨200枚、騎士団と魔法師団より名誉隊長の職と称号『王竜殺し』の認定を受けました。それに加えて、ギルドから緊急依頼達成の通常報酬として大金貨30枚、特別報酬として大金貨30枚となった。」
何か色々多いな。
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