挿話 ~神々の小噺Ⅱ~

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挿話 ~神々の小噺Ⅱ~

「1万年余りで辿り着いたか。今回は早いな」  自らの神域で甚之助の様子を伺っていたのは、魔神ハーバーン。この世界の理である魔素を生み出した張本人である。高い知能を持つ種がこの世界に現れて約100万年。幾多の絶滅と進化を繰り返し、1万年前に登場した現生人類により、再度この世界の理に近づきつつある。 「前回、理を暴いたのが20万年前の知的生命体だったか。パルテールという人間も観察対象に入れておくべきだな…このような人間と甚之助が出会うとは、フォルトゥナの力も作用していると考えられる」 「辿り着けるか楽しみだな。クックック…」  ハーバーンは普段他の神には見せない笑みを浮かべる。  労力を費やして作った問題の作成者は、問題を解けない者の苦悶より、解ける者の愉悦を見たいのである。  ◇  一方、他の神域で甚之助を見ていた神があと2人。戦神マルスと愛と美の女神であるディーナ。この2人も満足の行く加護を甚之助に与えられなかった。 「もぅ、甚ったら! もう崖っぷちまで来てた女の子を放置して街を出るなんて! 小指で押すだけで落とせたのにぃー!」 「あれはあれで遠慮したんじゃないか? 幼馴染とやらが甚にはいるからな」 「はぁ? 地球じゃないんだから、こっちじゃ一夫多妻なんて当たり前でしょ? もう15年住んでるんだからそれくらい知ってるでしょう」 「どうだか。そんな事より俺は甚の武具が気になる。木刀は良かったが、それ以降俺のが発動してねぇ…やっぱもうちょっと強めにかけてればよかったな…」 「そんな事ってなによ! 私にとっては重要だからね!? あーつまんない! もっと(いじ)ればよかった!」 「「はぁ…」」  神でさえ本人の望まない力は与えられない。  神界の厳しい掟だ。
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