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「あれ? 近づいてくる?」
先程からチラチラと俺の遠視魔法に掛かっていた3人と1匹は、徐々にこちらに近づきつつある。
本当に勘弁して下さい。まさか魔獣を擦り付ける気じゃ無いだろうな。
――!――!!――!?
やはり叫ぶ声が聞こえてくる。ゆっくり浸かりたかったのに…
「出たっ! なんだか分からないけど湯が溜まってるみたいよ! 大きな岩もある! レオっ、オルガナ! 早や―――ええっ! ひ、人!?」
「ミコトちゃん! レオ君早く!」
「うぉぉぉぉ!」
ミコトと呼ばれた人が最初にここに辿り着き、続いて2人が俺の湯治場に闖入してくる。
「あなた何してるの!?」
「なんでこんな所に人が! なんてこった! すまないそこの人っ! 魔獣が来る! 逃げてくれ!」
「レオ君っ! 危ない!」
ドガァン!
『キシキシキシキシ!』
とうとう魔獣も到着してしまった。若干湯気の多さに警戒していたが、俺が追加されて構わず突っ込んでくるようだ。俺の静かな湯治の時間を侵すとは!
俺はゆっくりと風呂縁に立ち、アッシュスコーピオンを睨みつける。遠視魔法で広げている無属性魔法を前方に集約し、相手を一刀に伏すイメージを持って魔力を爆発させる。
「――竜の威圧っ!」
ズンッ!
「うわっ!」
「ひぃっ!?」
「きゃぁ!」
『キキキッ!? キシキシ…』
目に見えない圧倒的な魔力が周囲を圧する。3匹の餌に1匹追加だと逸っていたアッシュスコーピオンは、圧の瞬間にビクッと身体を硬直させ、そのまま後ずさりして森に消えていった。
3人には悪い事をしたかな? すまない。まだピンポイントで対象を選べないんだ。どうしても集約範囲内を無差別に威圧してしまう。
俺が最近の魔獣の多さに辟易して、戦わずに済む方法を模索した結果編み出した魔法である。ダンジョンの魔素の濃さと、黒王竜の圧倒的な存在感をイメージの中心に置き、ただ威圧するだけの魔法。
どちらかと言えば固有技に近いかもしれない。
弱肉強食の世界で生きる、俺より弱い魔獣に非常に効果を発揮する一方、自我を持たない魔物には効かない。最弱クラスのゴブリンにすら効かない。それでも戦いの数は相当減って、旅は楽なものになった。
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