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「うんまかったぁ! 久しぶりに新鮮な肉食ったわ!」
「おいし~! でも香辛料ってかなり高いよね?」
「うん、村じゃ小瓶1本で銀貨1枚だったよ」
レオは食べ終わって満足げにし、遅れて食べ始めた2人も美味しそうに食べてくれている。それだけでこちらも振る舞った甲斐があるというものだ。俺は焼き野菜に塩を振ったものをつまみに、飲みかけの清酒をちびちびとやっていた。
「こんな魔物だらけの森で、風呂に入って酒と肴やってる16歳ってどこの怖いモン知らずのおっさんだよ」
「村では同年代の友人はいなかったからな。大人と過ごす内にこれが普通になってたんだ。おっさんに囲まれてたからな…もう治らん…」
「ジン君は帝都から来たの?」
「ああ」
「帝都は安全だって聞くけど、やっぱり依頼が少ないからこっちへ来たの?」
「いいや、依頼は二の次かな。世界を見て回りたいんだ」
「旅かぁ~いいなぁ~、俺らは生活でいっぱいいっぱいだわ」
「おっさんなのにすごいね、ジン」
「ですです!」
おっさんなのに凄いって何だよ。おっさん舐めてもらっちゃ困る。
ミコトは変態とか言うし、ちょいちょい毒入れて来るな…オルガナも普通に乗っかるんじゃない。
「別に凄くないだろ。好き勝手やってるだけだ」
「そー言えばジンってさ…」
食事をし終えたミコトが神妙な面持ちで何かを言いかけた所で、レオがそれを遮った。
「ミコト。それは俺が言わなきゃなんない。多分同じ事考えてるから」
「…わかった」
「ジンはソロなんだよな?」
「そうだよ」
この質問で俺は用件を察する。パーティーの誘いだろう。
「もし、もしあれだったら…俺達のパーティーに…いや、俺達をジンのパーティーに入れて欲しいんだ。ジンの旅の途中まででいいんだ。俺達はシスっていう村の出身でそこを拠点にしてるんだけど、拠点登録はしてないから割と自由にやれる。考えてみてくれないか?」
「あたしも同じです!」
「私達をジン君のパーティーに入れて下さいっ!」
やはり来たか。しかし、よく会ったばかりの、しかも1度は自分たちを脅かした人間をそこまで信用できるものだ。それを置いたとしても、この3人は正直俺の旅に付いて来られるような力は持っていないように思える。アッシュスコーピオン程度の魔獣や魔物なんて、この先うじゃうじゃ出てくるし、それ以上の敵も普通に出てくるだろう。これからも今日の様に守ってもらえるとか思っているとしたら、迷惑極まりない。
「断る」
――――っ!?
俺の即断に3人の表情が揺らぐ。
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