&SUMMER

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 三日後、笑梨は次のレッスンをオリバーでまた予約をした。レッスンは前回の復習を最初の数十分やったあと、最近あった出来事をフリートークで話すというもので、笑梨はうまく伝えられる自信がなかったが、仕事のことや作った料理のこと、そしてまだ時々絵を描いていることを話す――。  どんな絵を描くのか、とオリバーが尋ねるので笑梨は少しためらいながらも、スケッチブックに描いた太陽の輝く空の下、子供たちが元気よく公園で駆け回る姿を描いたそれを画面越しに見せる。  エリの絵には人を笑顔にさせる力があるね――早くてちゃんと聞き取れたかはわからないが、オリバーがそう言ってくれたように聞こえた。  レッスンが終わり、さよならをする前に笑梨は思い切ってオリバーに尋ねてみる。 「ちょっと日本語で話してもいいかな?」  オリバーが「オーケー」と言うので笑梨は続けた。 「オリバーが日本にいたのは、いつくらいの年齢の頃なの?」 「中学生の頃だよ」 「東京?」 「うん」  やっぱり、きっとあのオリバーだ。 「……わたしのこと、覚えて……ないよね?」  オリバーは一瞬うつむいたあと 「……もしかしてとは思ったんだ。覚えてるよ、エリ」  オリバーは笑梨のことを覚えていた。  夏祭りのこと。サッカーの練習のあと、美術室でよく絵を見て話したこと。
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