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笑梨にとってのひと夏の思い出――。
それは人生二度目の遠距離恋愛だった。
英語を習い始めようと思い立ったとき、笑梨はかなり切羽詰まっていた。
一か月後の八月末、担当顧客の海外のグループ会社向けにプレゼンをすることになったのだ。
「期待してるぞ」
上司からはそう言われたけれど「はい」と威勢よく返事する笑梨の心の内には汗が流れていた。どうしよう、英語なんて大学受験以来、触れてもいない。読んだり書いたりはできるけど、まして喋るなんて……。
「このプロジェクトが無事に終わったら、新しく立ち上がる戦略チームに君を推薦しようと思っている」
その言葉に込められた期待に応えきることができるのか、不安に思いながらも自分にさらなるプレッシャーをかけた。
これは絶対にやりきらないとダメだ。
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