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1話
「えー、ここ?」
同じ学年の女子に2人きりになりたいと声をかけられて、長い昼休みにちょっと楽しもうかなと軽い気持ちで応じたのは良かったが、いつも使っている屋上に鍵がかかっていて使えず、ちょっと離れている古くてあんまり人が近付かない第二図書室までやってきた。
「屋上開いてなかったし仕方ないじゃん。第二図書室なんて人滅多に来ないし、誰もいないでしょ」
「何でそんな事知ってるの? あ! さては、他の子連れ込んだ事あるんでしょー」
「時々昼寝するのに使ってるだけだって」
本当は連れ込んだことあるけど。
お互い遊びなんだから嘘つく必要はないんだろうけど、たまーに面倒なタイプがいるから誤魔化しておくに越したことはない。
というか、この子絶対面倒なタイプ。見た目可愛いしスタイルいいから誘いに乗ったけど、ちょっと失敗だったかなあ。
「お邪魔しまーす。……ほら、誰も居ない」
「本当だー。さすが第二図書室。大学内でも外れの方にあるし、古くて汚いから誰も近寄らないのね、きっと」
「そういうこと。じゃあ分かった所で……」
「あっ……もう、どこ触ってるの。そんなつもりじゃなかったのに」
分かりやすく誘っといて何言ってんだか。
「俺はこういうつもりだったんだけどなあ……?」
「えー、しょうがないなあ。私を特別にしてくれるならいいよ?」
なるほど、そう来たか。
「俺が特別な相手作らないの知ってるでしょ」
「知ってるよー。だから、初めての特別にしてって言ってるの」
この子の誘いに乗ったのマジで失敗だったな。なんか面倒になってきた。
「んー……この後で考えるよ」
「じゃあ、口でしてあげる。私結構上手いよ」
「へえ……お手並み拝見しようかな」
「その代わり、気持ちよくなれたらちゃんと彼女にしてね」
そう言って俺のズボンのチャックを下ろしていくのを眺める。
刺激されると反応するのは仕方がないとはいえ、このまま本当に出してこの子を彼女にするとか面倒だし……どうするかなあ。
俺が悩んでいる間にも、更に興奮させようと思ったのか彼女が自分の胸元を開けて見せつけている。
いよいよ下着からまだ萎えたままの大事な分身が取り出されて、それが彼女の唇に触れた瞬間、すぐ傍でバタンっという大きな物音がした。
なんだ……?人は居ないはずなのに。棚の中で本でも倒れたか?
「……あの」
「ひぃっ……!」
本棚の間からヌッと現れた黒髪ロングの眼鏡女性。その姿に心底ビックリして、今まで出した事がない変な声が口からこぼれ出た。
「さっきから一体何をやっているのでしょうか。ここは図書室なんですが」
「え……」
何だこの人。普通こういう場面に出くわしたら、きゃあって悲鳴あげると思うんだけど。というか、そもそも声かけるか?
俺、一応大事な部分もろ出しの状態ですよ?服を開けさせた男女がいるんですよ?それで何でそんな冷静でいられる?
「何なのよあんた。勝手に入ってこないでよ!」
「後から入ってきたのはそちらです」
「だったら気を利かせて出て行きなさいよ!」
「何故ですか? ここは図書室ですよ。本を読む気の無いあなた達の為に、どうして私が出て行かなければならないのでしょう。それに、私はここの管理を任されている人間で大学の職員でもあります。学生が問題行動を起こそうとしているのを黙って見過ごすわけにはいきません」
「げ」
まさか職員だったとは……俺とそんなに年齢変わらなそうに見えたから、学生だと思ってた。
「あははー……すみません。ここなら誰もいないかなーなんて思っちゃって」
「きちんと場所は選ぶべきでは?」
「そうですね……反省してます……」
「若いとはいえ、恋人とどこでも見境なくというのは感心しません」
「あー……俺達別に恋人ではないんですよねー……」
「え?」
へらっと誤魔化すように笑いながら言うと、目の前の女性の表情が一瞬キョトンとなった。でもすぐに真顔に戻ったのを見て、何故か惜しいと思ってしまう。
「俺、恋人とか必要ないんで」
「な……! さっき彼女にしてくれるって言ったじゃない!」
「考えるって言っただけで、彼女にするとは言ってないよ」
「バカ! 最低っ!」
やたらと激怒して出て行くのを見ながら、本当に彼女にしてもらえると思っていたのだろうかと不思議に思ってしまう。俺が遊びならいいけど特定の相手は作らないというのは有名な話だろうに。
「いいんですか? 彼女出て行っちゃいましたけど」
「ああ、別にいいです。誘われたから乗っただけなんで」
「そうですか」
さも興味が無さそうにそれだけ言うと、その人は俺に背を向け近くにあるテーブル席の椅子に座った。そして、一冊の本を手に取りそれを開く。
俺の存在無視で本を読み始めたその人に興味が湧いて、向かい側の席に座って彼女を観察する。俺が座った事に気付いているのかいないのか……その目は本から一度も離れない。
肌綺麗なんだな……白くてすべすべしてそうなのが見た目で分かる。触ったら気持ち良さそう。
見た目凄く地味だけど、手入れはきちんとしてるっぽいなあ。髪もサラサラだし。
「ふわぁ……」
なんか居心地いいな、ここ。静かだし、このまま寝れそう……
少しウトウトしながら向かいの席の観察を続けていると、ふっと崩れた表情に目が釘付けになった。
さっきまで殆ど表情を崩さなかったのに、本を読みながら微笑むその表情が、窓から差し込む太陽の光でキラキラして見えていた。
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