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3話
「定期試験前にレポート提出とかマジかよ……あの教授性格悪すぎだろ」
突然降ってわいた、試験前にレポートを提出するという課題。講義終了後もその衝撃に教室内がまだざわついている中、俺は溜め息を吐きながら部屋を出て行く。
文句を言ったところで課題が無くなるわけじゃないし、とっとと終わらせよう。
「ねえ圭介、私の家で一緒にレポートやらない?」
教室を出てすぐかけられた声に振り返ると、いつぞやに体を重ねた事がある見た目可愛い系の同級生が立っている。
私の家でという辺り、やるのがレポートだけじゃないのは明白だ。この子は後腐れなく遊びたいだけってタイプの子だったはずだけど、だとしても今はそういう気分じゃない。
「いや……遠慮しとく。1人でやる方が早いし」
「ふーん。噂本当なんだ」
「噂?」
「最近圭介が誰の誘いにも乗らないって、女子の間で噂になってんの。しかも、昼休みになると第二図書室で地味な女子と一緒にいるって。もしかして彼女?」
「は?! あの人はそんなんじゃないし!」
何なんだよその噂!
というか、見られてんの全然気付かなかった。
「あ、そうなの? でも、毎日一緒にいるって聞いたけど」
「それはっ……確かに一緒にいるけど別にそういうんじゃ……」
「何焦ってんの?」
「焦ってないし!」
「まあ、別に圭介に彼女が出来ようが私はどっちでもいいんだけど。でも、気を付けた方がいいよ」
「気を付ける?」
「女は怖いからね。嫉妬で相手を傷つけようとする子も出てくるかも……なーんて……」
「あの人傷つけようとしたら、俺マジで許さないよ?」
思いがけず低い声が出て、その子がビクッと体を震わせたのが分かった。
「じょ、冗談に決まってるじゃん。マジになんないでよ。あー、ビックリした……」
「悪い……つい」
「でも、そっか。圭介マジなんだ。ふーん……じゃあ、私が皆に言っといてあげるよ」
「何を?」
ニヤニヤしているのを見る限り、良いことではない気する。
「圭介は彼女にマジ惚れしてるから、邪魔しないであげてって」
「はあ?!」
「皆の反応が楽しみだわー。特別な相手は作らないって名言していた男のマジ恋。ふふっ……いい話のネタが出来ちゃった。じゃあね、圭介! 初恋頑張って! あ、レポートも頑張って!」
「あ、おい! 勝手に決めつけんな! 余計な噂流すなよ! おい、話聞けって!」
楽しそうに笑いながら小走りで去っていく姿が見えなくなって、大きな溜め息が零れ落ちた。
絶対楽しんでるだけだろ、あれ。
「しかも初恋って……」
確かに、今まで誰かを特別な意味で好きになったことは無いけど。
でも、別に麻穂さんに恋してるわけじゃ……
「――そういうんじゃないはず」
毎日昼休みにあの場所に行ってるのは、本当に居心地がいいからで。それ以外の特別な感情なんてない。
……よな?
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