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自分の部屋に入ると、ベッドのすぐ下に敷かれた布団が目に入った。
空き部屋が物置になっていて使えず、俺の部屋に敷かれた麻穂さん用の布団。ちゃんと掃除はしてあるから、と母さんが言っていた通り、埃もゴミも見当たらない。それでも、俺がベッドで彼女が床の布団っていうのはどうなんだと思って話をしても、麻穂さんは下で寝ると譲らなかった。
「本当に下で寝るの? 一緒にベッドで寝てもいいのに」
「折角準備してくれたのに、寝ないと申し訳ないです。 今日は疲れたでしょうし、お互いゆっくり寝ましょう?」
そう言って敷かれた布団に潜り込む彼女に、小さく溜息をこぼす。
同じ部屋にいるのに別々で寝るなんて……と思いながら、部屋の電気を消してベッドに入った。
「おやすみなさい」
下から聞こえた声に、渋々「おやすみ」と返事をする。
色々あって疲れてるだろうと気遣ってくれてるのは分かってる。でも。
しばらくして、無言でベッドから降りた俺は、背中を向けて寝ている麻穂さんの布団に潜り込んで、後ろからぎゅっと抱きしめた。
驚いたように振り返った彼女にキスをしてから、首元に顔を擦り付ける。
「やっぱりこうやって一緒に寝たい。別々で寝るのとか嫌だ……」
「……しょうがないですね」
抱きしめた腕をポンポンと撫でられる。
「今子供扱いしてるでしょ」
「してます」
「どうせ年下のガキですよー……」
間髪入れずに即答されて不貞腐れていると、クスクスと笑う声が聞こえてくる。
「正直なことを言うと、嬉しいです。私も、ちょっと寂しいなって思ってましたから」
「本当?」
「はい」
今度は即答してくれたことが嬉しくて、自然と抱きしめる腕に力がこもる。
「じゃあ、今度こそ……おやすみなさい」
「うん……おやすみ……」
麻穂さんの声に誘われるように目を閉じると、腕の中に感じる温もりも相まってすぐに意識が遠のいていった。
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