4話

3/6
758人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
「んん……ふあー……朝か……」 まだボーっとした頭で、欠伸をしながらベッドの中で寝返りを打つ。 今日は月曜日。麻穂さんとデートの約束をしている日だ。 「は……? まだ朝の7時過ぎじゃん」 驚きすぎてベッドサイドにある時計を思わず二度見する。 麻穂さんとの約束は10時。まだ2時間以上もある。 いつも講義が1限からある時ですらこんなに早く起きないのに、目覚ましもかけずにこんなに早く目が覚めるなんて。 「浮かれてんのかな俺……これがマジ惚れの力ってやつ?」 今でも、本当に麻穂さんに惚れてるのかどうか自分で自信が持てない。でも、今までとは違うってことだけは分かる。 「とりあえず、シャワー浴びてから軽く朝飯食おう」 あ。その前に麻穂さんに連絡するか。 昨日の夜も確認の連絡したし、流石にうざいって思われるかなー。朝も早いし。 「なんか俺らしくないなー」 今までそんなことを気にして悩む事なんて無かったのに。 まあ、電話じゃないし気付いた時に返事してくれるだろ。 「よし」 ”今起きたー。楽しみで早く目が覚めちゃったんだけど!” 「……っと。これで送信。――さて、シャワー行こ」 熱めのシャワーを浴びて完全に目を覚ます。 シャワーに打たれながら考えるのは、この後のデートのこと。 待ち合わせに遅れるのは絶対なしだなとか、服何系が好きかなとか、休日の麻穂さんどんな感じなんだろうとか――自分が浮足立っている気がして、ソワソワして妙に落ち着かない。 やっぱり、今までのデートの時と全然違う。 そもそも、今まで女の子とデートする時はホテルに行くのが目的だったし、比べるものではないのかもしれない。 麻穂さんとホテルに……なんて今は考えてないし、目的はそれじゃない。 今日の目的は、頑張ったご褒美を貰うこと……のはず。 あ。そういえば、俺がちゃんと成人してる大人の男だってことも認識してもらわないといけないんだった。 「ふあー。あちー」 風呂から出てスマホを見ると、麻穂さんから返信が来ている。 ”おはようございます。私も今目が覚めました”――たったそれだけの返事なのに、嬉しくなった自分がいる。 今までの俺だったら何も感じてないだろう一言なのに、起きるタイミングが同じだった事に自然と顔が緩んでくる。 麻穂さんも今から準備かな。あんまり連絡を取り合うと邪魔になりそうだ。 同じ時間に目が覚めるとか運命だったりして――目の前に麻穂さんがいたら呆れた様な顔をされそうな言葉を並べて、また後で!と返信をする。 「俺も朝飯食べたら準備しないとな」 いつも通りトーストと珈琲でサッと食事を終わらせて、クローゼットを開ける。 麻穂さんならシンプルめな服がいいかなあ。指輪とかもあんまり付けてない方が良さそう。でも、年下っぽさは出したくない。 「……これはいくらなんでもシンプル過ぎる。却下」 「ちょっとガキっぽい気がする……却下」 あーでもないこーでもないと服を選んでいたらいつの間にか時間が経っていて、あんなに余裕があったはずの時間が残り少なくなっている。 結局慌てて色々準備をして、バタバタと待ち合わせ場所に向かう羽目になった。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!