小さなピンクの花束

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「ごめんね、加地くん」 「謝られるようなことしてないけど」 「だって、辛いでしょ?」 いつのまにか教室内に人はいなくなってて、シンと静まり返ってた。 「…も、いいから」 「でも…」 あたしは加地くんを傷つけてしかいない。 机の上に置かれた手をキュッと握ると、少し強張ったのが分かった。 加地くんはそのあたしの手をゆっくり解くと、優しく笑って言った。 「行ってこいよ」 「…うん」 「俺、ここにいるから」 「…分かった」 外を見つめたままの加地くんが何を考えてるか分からないけど、背中を押してくれるように感じた。 だから、加地くんのためにもあたしは最後に先生に会いに行く。 教室を出る前にもう一度加地くんを見ると、外を見てなかった。 俯いたその後ろ姿を見てると、どうしても先生のことだけを考えてあそこに行くことは出来なかった。 それでも、久しぶりなはずなのに、足は勝手に美術室へと向かう。 少し早足で、先生のいるあの場所に。
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