小さなピンクの花束

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よく見るとそれは花束で。 卒業生はみんなカーネーションを貰ったけど、それと並べると確実に見劣りしてしまうような、小さなピンクの花束だった。 それはきっと、主役の花を引き立たせるようなものなんだろう。 花束といっても、そんなに大きくない、小ぶりで控えめな可愛いそれは、貰ったカーネーョンよりも綺麗に見えた。 先生がわざわざこれを選んだ理由は分からないけど、誰かへ贈るものなら、少し地味すぎるような。 近づいてそれを手に取ると、カサリと何かが床に落ちた。 メッセージカードのようなものが裏返しになって、あたしの足元にあった。 それはきっとこの花束と一緒に置いてあったもので、これを贈る人へのメッセージなんだろう。 見ちゃいけないと思いながらも、それを拾って見てしまった。 「え…?」 紛れもなく先生の字。 綺麗な字が、一文だけ。 【卒業おめでとう】 …たった、それだけ。
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