小さなピンクの花束

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それならいいじゃない。 先生はもうほんとに終わらせようとしてるんだから、それで。 それが分かってるのに何でだろう。 「っ…やだ…」 涙は自然と溢れてくるし、もう一度前みたいに先生にあたしを見てもらいたいと思ってしまう。 このまま終わってしまうのが、やっぱり嫌でたまらないんだ。 結局は口だけだったのかもしれない。 終わらせるために先生に会いに行くんだと、自分にも加地くんにも言い聞かせて、そんなのは言い訳だった。 ただ、会いたかっただけ。 もう一度話したかっただけ。 だけど、そんなこと加地くんには言えないし知られるわけにはいかない。 無意識に、加地くんの中のあたしを少しでもいい人に見せたかったのかもしれない。 そう思っていたのなら、それを最後まで突き通すべきだよね。 今溢れる涙を、戻ったとき加地くんに気づかれちゃいけない。 不安でたまらない彼に、何もなかったみたいに笑顔を見せなくちゃ。 …この気持ちも、この先にずっと隠しておかなきゃ。 …だけど、今だけ。 もう少しだけ、ここにいていいかな。 ほんとに、終わりにするから。
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