133人が本棚に入れています
本棚に追加
「人いねぇな。」
「だってもう終わって結構時間経つよ。みんな帰っちゃったんだよ」
「休みの日にコッソリ忍び込んだみたい」
悪戯っ子みたいに笑う加地くん。
確かに言われてみればそうかも。
「そうだね」
靴に履き替えて外に出ると、何だか急に寂しくなってきた。
ここにこうして制服で通うのは、ほんとに今日が最後なんだ。
隣を歩く加地くんが、制服を着るのも今日で最後。制服を着て手を繋いでここを歩くのは、最初で最後だ。
「咲良?」
もう少しで門を出るってところであたしが立ち止まったから、加地くんは不思議そうに振り返る。
出たら、ほんとに終わり。
そう思うと涙がジワリと滲んだけど、加地くんに見られないように振り返って校舎を見つめた。
「寂しいね、やっぱり」
楽しかったよ、すごく。
緊張して入学して、3年間なんてあっという間で。ずっと好きだった先生ともここで付き合えた。
たった3年だって言えばそうだけど、あたしにとってはすごく濃いものだった。
最初のコメントを投稿しよう!