手のひらに宇宙をのせたくて

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 ラムネの瓶は無惨にたたき割られた。  俺が止めるヒマはなかった。  彼女は、平らな所ではなく、砂利を敷きつめた場所を犯行現場に選んだ。  ラムネ瓶の特徴的なくびれから下の部分は無事。  破片は砂利にまぎれて行方不明。  わざわざ裸足で砂利道を歩こうとする酔狂なやつがいない限り、大丈夫。  そこまでして欲しいかね、中のビー玉。  彼女はビー玉をていねいに拭いて、目を近づけた。 「宇宙みたい」  満足そうでなにより。 「何なら俺のもやろうか?」  ラムネ瓶を構えてみる。 「ホンモノがほしい」  彼女は真剣なまなざしで言った。 「そういう宝石のことか?」  俺がさらに問うと、彼女は上を示した。  青い空に巨大な入道雲。  それよりもっと高い所。  うん、俺の手に負えない。
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