ペチュニア【心の平安】

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ペチュニア【心の平安】

クン。と、鼻で息を吸い込む 土の匂いがする。草の匂いがする。花の匂いがする。 向こうでは、干してある毛布の上で猫が、真剣な顔をして前足をフミフミしている。 お腹に顔を埋める。お日様の匂い。 邪魔しないでよ。そんな顔で睨んで、またフミフミ、フミフミ。 アナタのお母さんは優しかったの? 大きくなっても尚、思い出すほどに。 聞いてちょうだいな、大きな子猫チャン。 私のお母さんも優しい人だったわ。子供の頃は戦争があってね、毎日命の危険に晒されていた。 お母さんは私を包んでくれた。 お母さんは私の世界だった。 私が猫ならば今でもきっと、フミフミフミフミ、毎日していたでしょうね。 日向ぼっこと孫の寝顔。 故郷の匂いと、幸せな思い出。 空に行くは旅客機、海に浮かぶはフェリーと漁船。 今日も穏やかなり。 明日もきっと、穏やかなり。
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