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「しゅう…?」
顔を上げると、心配そうに太一がこちらを見ている。
「どうした?」
柊の目頭を太一が指で拭う。
そこでやっと気が付いた。
太一の寝巻きのTシャツが柊の涙で濡れて、大きなシミができている。
「…ごめん、何でもないの」
そう言って柊は慌てて起き上がり、洗面所に駆け込んだ。
そんなこと、願ってはいけなかった。
そんなこと、願ってしまったら…
柊は息をするのも忘れて、冷水でバシャバシャと顔を濡らした。
顔を上げると、青白い顔をした自分が映る。
さっきまでの幸せな気持ちはどこかへ消えてしまった。
やっぱり旅行になど、来なければ良かった。
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