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夏休みの宿題
8月19日。
コロナウィルスの影響で、11日間に短縮された夏休みが終わった。
「それじゃー、宿題回収するぞー。まずは、国語の漢字帳だ。1番後ろから前に回してー」
バサバサバサ……
ソーシャルディスタンスで間隔を離した机が6列。色とりどりの手作りマスクを付けた子ども達が、後ろから来たドリルの束の上に自分のドリルを乗せて、前の人に渡す。比較的静かに前送りして、1番前の席まで到達すると、廊下側の阿川さんから順番に受け取っていく。
「よーし、次は読書感想文な!」
はぁい、と気の抜けた返事の後、400字詰の原稿用紙がバサバサと回されてくる。
「はい、次は絵日記だー」
真ん中のやや後ろで、前後の座席の子ども達が、ヒソヒソと何やら会話している。その分、彼らの列だけ回収が遅い。はーん、さては。
「忘れてきたやつは、手を上げろよー」
スッと細い腕が1本上がった。クラスの注目が集まる。耳まで赤くして、それでも「忘れました」と正直に答えた。
――あれは、久保田か?
ここ4年2組の中でも、彼は大人しい方で、忘れ物には縁の薄い真面目な生徒だという認識だ。平均より低い身体を一層小さく縮こめたようだった。
「忘れたやつには、ペナルティあるって言ってたよなー。放課後、掃除終わったら、職員室に来いよー」
「はい……」
久保田は素直に頷いた。
「んー、じゃあ最後、算数のドリル集めるぞー」
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