平熱何度?

1/1
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ

平熱何度?

 新型コロナの影響で、検温しなければ入場できない施設が増えた。私の会社でも、外部からやってくる顧客に対して検温を行うために事務所に機械が設置されている。(社員は自己責任で検温。この機械を使わなくてもよい)  手で持ち、おでこに当ててピッとやるあれではなくて、顔認証検温システム?の機械で、モニターに顔を映して検温するというもの。手で触れたり持ったりする必要がないので、衛生面では優れるが手で持つタイプよりは若干時間がかかる。  体温の目安は三十七度五分。それ以上だと入場できないし、社員は帰宅命令が出る。無症状の人はどうしようもないが、これで少しでもリスクを減らす目的だ。  そこで思うのは、みんなの平熱はどれくらいなのだろうか。一般的には三十六度台が多いと思われるが、私自身は低体温なので三十五度後半から三十六度前半。出先で検温してもらい、三十六度後半あると「高いな。生理前だからか?」などと少しびっくりする。  体温が低い人はいい。しかし、平熱が高い人は?高くても三十七度五分以上は聞いたことはないがいないとも言い切れない。  例えば子ども、赤ちゃんなどは平熱が高い。さらに外気に影響されやすく、熱がこもりやすいので何もなくても三十八度近くまで上がることもよくある。そういうときは十分な水分を取り、落ち着いてから再検温するが、大人にそういう人はいないのだろうか?  ふと中学生のころのことを思い出した。二年生のときだったと思う。どういう経緯かは忘れたが、担任の先生が生徒たちに平熱を尋ねることがあった。やはり三十六度台が多かったように思う。  私の近くの席に近藤くんという男の子がいた。彼は白くて若干ぽっちゃりめ、ツリ目の男の子で、お笑い芸人四千頭身の後藤さんみたいにぼそぼそしゃべる男の子だった。中学で初めて出会い、二年生で最初で最後、同じクラスになった。 「平熱もっと高いよーって人おらん?」  先生が再度尋ねると、近藤くんはぼそっと呟いた。 「……度」 「ん?何度だって?」  先生が再々度尋ねると、近藤くんは斜め下を向いたまま吐き捨てるように言った。 「…三十七度」 「三十七度?高いねぇ。赤ちゃんみたいだねえ」  先生にそう言われて少し恥ずかしそうにしていた近藤くん。私にしてみれば当時も三十五度五分~くらいが平熱だったので、三十七度には少し面食らった。私よりどんだけ体が熱いんだと。  そんなわけで平熱にもかなりの差があることがわかる。平熱の高い人は検温される度にドキドキしてるんじゃないかなと思う。低体温の私でさえ毎回ドキドキするもの笑。  近藤くんとは中学卒業以来会ったことはないけれど、日本のどこかでビクビクしながら検温してるのかなと思うと、少し笑ってしまう。  ごめんね、近藤くん。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!