猫の偉大さを思い知った午前零時①

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猫の偉大さを思い知った午前零時①

 猫派か犬派か、というくらいだから、動物の中では絶大な人気を誇る犬猫わんにゃん。みなさまはどちらをご所望だろうか。  猫派、犬派、両方と答える人もいるだろう。実は私、どちらもイマイチというのが本音である。猫も犬もペットとして飼ったことはある。両方かわいいとも思う。しかしその程度であり、世の中の犬猫好きとは似ても似つかない。  強いてあげるとするならば、トカゲやヤモリ、イグアナなど見た目が恐竜っぽいものの方が好きだ。ヘビも好き。あまり大きいとびっくりするが、目がつぶらでかわいらしい。  そんなこんなで猫に話を戻そう。  先日、夜の十一時前くらい、駐車場に車を停めてからファミレスに入った。出先だったのでなかなかごはんも食べられず、そのような時間になった。  明日も早いのでさっさと食事を終え、会計を済ませ、いざ帰ろうと車まで戻ると猫の鳴き声がした。なぜか私の車付近で。悪い予感がした。  このまま発車させては、猫をひき殺しかねないと思った私は、スマホのライトをつけて猫の捜索を開始する。  まもなく見つけた。車体の下の部品の上をちょろちょろ走り回っている。全く捕まらない。一匹の黒い仔猫だった。目ヤニもたっぷりでわりと生まれてすぐだと思われる。エンジンルームにまで移動したかと思えば、また後部の車輪付近に移動したり、またエンジンルームに戻ったりと、とにかく全く捕まえられない。  私が車の周りをライトを持ってうろちょろしているせいだろうか。ファミレスの女性スタッフ二名が心配して様子をうかがいにやってきた(不審者と思われたかも?笑) 「猫ですか?」  責任者らしい女性が声をかけてきた。 「???」  まさか猫の存在を知っている??? 「ここに猫いるんですか?」 「いえ普段はいないんです。今日の夕方ごろから突然やってきて、駐車場から離れなくて。私たちはもちろん餌はあげないんですけど、もしかしたら通りすがりの人が餌をあげているのかもしれません」  と。うそーん、早く対応してよ~、と思いながらまた猫の捕物帳を開始する。  スタッフさんも、猫を捕まえたときのためのカゴを持ってきてくれたり、おびき寄せるためにとツナを持ってきてくれたりした。さらにしばらくして若いスタッフさんが、 「にゃんチュールありました!」  と猫用の餌まで持ってきてくれた。 「猫飼ってるんですか?」  と尋ねると、 「いえ、猫は飼ってません。友達の家とか、チャンスがあったら猫にあげたくて持ち歩いてます!!」  マジか。猫パワーすごすぎる。  いや感心している場合ではなかった。すでに夜十一時半を回っていた。最悪JAFを考えたが、待ち時間と作業時間を考えたら、もう少しねばってもいい気がした。猫の姿は見えているのだから。 「猫ですか?」  鳴き声が聞こえたのだろう。今度は通りすがりのお兄さんが話しかけてきてくれた。背が高くメガネで黒マッチョ、ミズノのTシャツにリュック姿で、これから絶対ジム行くんだろうな、と一瞬で想像してしまえるようなお兄さん。 「そうなんです。車の下から出てこなくて」 「あー、温かいですからね、車付近は」 「そうなんですよねぇ」  そう答えながらも、夏なのに車付近は熱すぎないか?と自分に疑問を投げかける。が、深く考えないことにした。    私が何も言わなくても、お兄さんはスマホのライトを付けて捜索を開始した。何なら車の下にまでもぐってくれて(体が大きいからほぼ入ってはいないけれど)、それでもダメで、ボンネットを開けてみたけどそれでもダメで、私もネット情報で、クラクションを鳴らしたり、エンジンルームの部品を叩いたり、ありとあらゆることをしたがダメだった。  ちなみに、スマホで猫の鳴き声音声はずっと流していた。返事をしてくれるので居場所がわかりやすい。だが居場所がわかっても捕まえられない。  お兄さんの家がファミレスの隣のマンションらしく、ものさしまで持ってきてくれて、エンジンルームを探ってくれたがダメで、ジャッキで持ち上げましょう!と意気込んで持ってきてくれたが、部品が足りずダメで、私の車にもジャッキを積んでおらずそれもダメダメで(積んでてもどうせ私一人じゃ扱えないし苦笑)、お兄さんに申し訳なさすぎてついにJAFを呼んだ。  午前零時を回っていた。ファミレスは午前零時までだったのでいつの間にか閉まっていた。  お兄さんは、お力になれずと謝ってきたが、ここまでしてもらって感謝しかない。きっと猫を助けたかったんだろうなと思う。猫の鳴き声を聞いて、まっすぐこっちに来たもの。本当に猫ってやつはすごいやつだ。  お兄さん大丈夫、車のプロ(JAF)に必ず猫は救ってもらうから!とお兄さんに別れを告げる(めっちゃお礼を言った。車にあったアクエリアスでもあげようと思ったが、お礼などいいと去って行ったお兄さん。猫の方を見つめて名残惜しそうにしていた)  しょうもないことでJAFを呼んだ過去のある私だが、今回は仕方ないと思う。もっと早く呼べばよかったが、ここまで時間がかかるとは思わなかった。  車の中で電子書籍マンガを読でいたら、わりとすぐにJAF到着。三十分くらいと言われていたが、二十分くらいで来たと思う。夜なので車も少ないおかげかもしれないが、すでに午前零時半。この戦いはまだまだ続く……          →猫の偉大さを思い知った午前零時②へ続く
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