猫の偉大さを思い知った午前零時②

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猫の偉大さを思い知った午前零時②

 JAFのお兄さんが作業を開始したが現状は変わらなかった。それどころか疲れてエンジンルームの裏側からほとんど動かなくなる仔猫。JAFのお兄さんも困ってしまう。車のプロがんばってくれ!  そのうちファミレススタッフが帰る時刻になり全員出てきた。客であった私が帰るまでは、スタッフも帰ることはできないのだろう。そもそもお店の駐車場に猫がいたのが原因だし苦笑。  スタッフは若い男女が多くてかなり協力的だった。スマホで別の音声を流したり、若い男の子も車の下にもぐって、エンジンルームから猫をおびき寄せようとしてくれた。出ては来ないが顔だけ少しのぞかせて、にゃんチュールをたまにぺろっとするらしく、お腹が空いているのは間違いない。そしてにゃんチュールの威力も半端ない笑。  JAFのお兄さんついに決断。 「車前方を持ち上げて、完全に体を下に入れられるようにしましょうか。車を持ち上げても大丈夫ですか?」  承諾しJAFのあの車が出動。ジャッキなどは使わず(そりゃそうか)、前輪をJAFの車の後ろの台に乗せて、車の前方をかなり持ち上げてくれた。思っていた以上に斜めになっており、ジャッキよりかなり戦闘力が高いことが発覚した笑。  JAFのお兄さん、車の下に完全にもぐり込み、ファミレスのスタッフにもらったにゃんチュールを使用。お兄さんもにゃんチュールの威力に気がついたらしい。  しかしここまでしても仔猫は降りて来てはくれない。ちょろちょろ奥から舌だけを出してにゃんチュールを舐めるだけ笑。  そのうち、閉店しているにも関わらず、ある一台の車が駐車場に入ってきた。大きな黒いミニバン。車が黒いし、夜だし、座席にどんな人が乗っているのか全然見えないし、私はJAFのお兄さんそっちのけでその車を注視した。  するとどうだろう。キャップを被った二十代半ばくらいの若いお兄さんが、車から下りてこちらに近づいてきた。手には何かを持っている。 「これ、猫の餌なんで、よかったらどうぞ」  えぇー!!こんな深夜にわざわざ猫の餌とか持ってきてくれる!?どんな善人なんだ……いや、これが猫パワーなのだ。 「も、もしかしてお客様ですか?今日来られました?」  ファミレススタッフも驚き、私の代わりに尋ねてくれる。 「いや、さっきたまたまそこの交差点で止まってたら猫の声が聞こえたんで。JAFも見えたんで、猫が車に入ってるんだろうなって、帰って餌持ってきました。うち猫いるんですよ、二匹」 「あ、ならこの猫もいりませんか?困ってるんですぅ」  すかさずお願いをする、ベテランファミレススタッフ笑。確かにこのままファミレスに猫がいても困るし、保健所に連れて行っても二週間で処分されてしまうのでかわいそうなだけだ。 「え……」  さすがにお兄さんも、ファミレス店員の強引さに少し戸惑っていたが、 「……何匹ですか?」  ですって。一匹くらいならもらってくれそうな雰囲気を醸し出すお兄さん。 「黒の仔猫一匹です!」    元気に返事するベテラン店員。 「ちょっと聞いてきますね」  車に戻るお兄さん。同乗者がいるらしい。おそらく配偶者っぽい感じ。  猫がすごすぎる。猫があの夫婦を呼び寄せたのだ。最初は、駐車場にいる猫を放置するファミレスにちょっとイラついていたが、何だかもう猫がすごすぎて、そんなのどうでもよくなっていた。  JAFのお兄さんはその間も車の下にもぐって格闘。作業しながらも、ベテラン店員の猫の押し売り(笑)の様子を見て笑っていた。  そのときだった。 「あ、顔が出てきました!」  ついに猫に進展があったのか!?JAFのお兄さんが、にゃんチュールでさらにおびき出そうと必死になる。もちろん汗だく。ずっと車の下に寝転がって、上半身だけを起こしている状態。お兄さんありがとう。まだ猫は捕まらないけど先に言っておきますね、心の中で。  お兄さんがゆっくり車の下から出てきた。その両手の中には、優しく包み込まれた仔猫が丸まっていた。 「うわぁ、ありがとうございます!すごい!よかったぁ!!」  私は深夜にも関わらず思いっ切り拍手喝采していた。  気がつくと、先ほどの若いお兄さんとパートナーである若い女性が車から出てきていた。金髪ロングでギャルっぽいお姉さん。お兄さんと同じようなキャップを被っていた。  JAFのお兄さんが先程の流れをくみ取り、若いお兄さんに仔猫を渡すと、受け取ってくれる。女性も頷いていた。  え、本当にいいの?里親決定でいいの?様子をうかがう私。 「大丈夫ですか?もらっていただけますか?タオルとかいります?」  攻めのベテラン店員が声をかけると、 「このままで大丈夫です。連れて帰ります」 と若い夫婦。それどころか、ありがとうございます、とものすごいお礼を言われた。いや、こっちの方がありがとうございますなんだが笑。私も「ありがとうございます!」と何度も何度も深い会釈をした。もうそれ以外の言葉がなかった、ありがたすぎて。  猫の貰い手も決まり、私もファミレススタッフたちもJAFのお兄さんもやっと帰れる(あ、JAFのお兄さんは夜勤の続きかな笑)。  深夜一時半~。よかった、二時にはならなかった。ほっとして、この瞬間を迎えることができた。猫の偉大さを知った約二時間半だった。  まあ、出先だったので、ここから家まで約一時間かかったんですけどね苦笑。 【余談】  JAFのお兄さんに、猫で呼ばれることってよくあるんですか、と尋ねたら、 「冬はよくあるけど、こんな暑いときは珍しいし、こんなに苦戦したのも初めて」  ということらしいです笑。  お兄さん本当にお疲れさまでした!  あ、メガネ黒マッチョのお兄さんも!!笑  みなさん、ありがとうございました!!  
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