新型コロナと舞台とAKB48と①

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新型コロナと舞台とAKB48と①

 最近、好きな俳優たちの舞台の先行販売が相次いで発表になった。主に東京でだが、こんな状況でなければ飛行機で飛んで行きたいくらいだ。  東京近辺には十年弱住んでいたので、ライブ、イベント、舞台などのためにふらっと飛行機に乗ることが未だにある。(数ヶ月前から予約するので全然ふらっとではないが笑)  羽田の近くに住んでいたこともあるので、京急やモノレールには懐かしさがあり、関西や名古屋などでライブやイベントがあっても、東京であるなら東京に行こうと思ってしまう。それなりに慣れているから安心だし、住んでいたころに行けなかった場所の観光などもけっこう楽しい。  しばらくは座席数が限定されるので、九州で舞台があったとしてもチケットの倍率はいつもの倍以上。最近だと菅田将暉の舞台に落選したので、有名俳優が出ているような舞台は危ういだろう。  新型コロナの影響で、私の手元にあった舞台のチケットは全て払い戻しとなった。コロナが流行り出す前にヒゲダン(Official髭男dism)のコンサートに行けたのはせめてもの救いだ。九州福岡に行きやすい場所に住んでいるので、東京に住んでいるころより、コンサートや舞台の参戦率は高い。  東京での心残りはそこ。当時の私は新卒で入った会社を辞め、転職して臨時社員としてフルタイムで働いていた。仕事内容はかなり好きで、結局東京を離れる直前までほとんどその会社に勤めていたわけだが、正社員でもなく、ボーナスも寸志もなく完全時給制で、長い夏休みのある八月の翌月の給料などは散々だった。  自分一人ならば十分生きていける収入ではあるが、家賃、光熱費、携帯料金などを考えると贅沢はできない。一公演一万円などする舞台はそうそう見に行けるものでもなく、コンサートも、映画イベントも、アニメイベントもしかり。お金がなければ、東京での肩身は狭い。  今さらだが、まだ売れる前の中村倫也の舞台を見ておけばよかったとか、白石隼也くんの舞台を見ておけばよかったとか後悔は多い。スポーツ観戦、コンサート、観光などもっと色々見に行くべきだったと思うが、やはり経済的に限度があった。  そんな中、当時私をライブに連れて行ってくれた女の子がいた。転職した先の会社の同僚で、隣の部署のサエちゃん(仮)。サエちゃんは色白で黒髪スーパーロング、身長は私より少し小さいくらいだったがかなり細めで(私の半分くらいに見える笑)、すらりとしていた。  不思議なことになぜ仲良くなったかさっぱり覚えていない。隣の部署なので一緒に仕事をすることもない。顔を合わせているうちにだとは思うが、連絡先を交換したときのことさえ覚えていない。だが私たちは、一緒に遊びに出かける程度には仲良くなっていた。  サエちゃんはアイドルオタクで、当時はAKB48にハマっていた。みんな好きだが峯岸みなみちゃん推しだと言っていたと思う。私はAKB48には全く興味をもったこともなかったが、当時はすぐ会いに行けるアイドルで、実際、秋葉原に行けばすぐに会えた。その程度の人気だった。  しかし、紅白に出て一転。チケットが取れなくなったとサエちゃんが嘆いていたのを思い出す。女性限定シートなら抽選も当たりやすいから行こうと誘われたのがきっかけだったと思う。圧倒的に男性が多いので、女性限定シートや家族シートは穴場らしい。  私は喜んで了承した。自分でチケットを取るほどの興味はなかったが、アイドルのライブというものには興味があった。  何チームの公演が見たいかと聞かれたが、私に推しはいないので完全にサエちゃんにおまかせした。(チームごとの公演だとも知らなかったくらいだし)  値段も普通のライブやコンサートとは違い、二千円~くらいの格安だったと思う。そうして私は、秋葉原ドン・キホーテのAKB劇場に初めて足を踏み入れたのだ。
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