雀の挨拶

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『雀に引っ越しの挨拶をさせる仕事をはじめました』  ミヤコはそうキャッチフレーズを書いたポスターを作ってにんまりした。ミヤコの家はニワトリや烏骨鶏を飼っていて鳥を手なずけるのは慣れている。鳥が動物だからってバカにしたらいけない。意外と頭が良いし、言う事を聞く。けれど、鳥が頭が良いと述べたが、流石に引っ越しの挨拶は出来ない。「挨拶をして来てくれ」と言ったって人の言葉が分かるわけはない。しかしミヤコは小さい時から鳥と喋れる能力があった。  何故、引っ越しの挨拶に雀を選んだかというと日本人が一番に身近な鳥だからだ。辞書で調べてみたら日本だけではないアジアの広い地域に分布している。雀なら皆がいぶかしがらないだろう。それにカラスなんかに比べて怖くもない。  雀は捕まえてはいけないのは誰もが知っているだろう。雀を捕獲したりペットとして飼育することは「鳥獣保護法第8条」でダメだと決まっている。だからミヤコは近所の公園に行って、そこにいる雀にお願いをする。今日も新しい人が越してきたので雀にメモ用紙を嘴に挟んで持って行ってもらおうと思った。ミヤコは暑い道路を歩いて意気揚々として公園にやって来た。お願いをするのは三度目だ。まだ挨拶をさせる仕事をして間もない。ゆくゆくは人から依頼を受けて仕事をさせようと思っている。だからポスターを作ったのだが今のところミヤコの事情でしか雀は動いていない。
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