私はなんにも分かってない【雨木はるかの場合】 その3-4

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私はなんにも分かってない【雨木はるかの場合】 その3-4

「あの、今日は本当にわざわざ済みません。有難うございます」  居酒屋の席について、適当に頼んだ料理と最初の一杯のビールを前に、まずは頭を下げる。 「いや、上司の仕事のうちだよ。デスクに座ってる間だけじゃ、対応しきれないこともあるしな」  気負わせないためか、とても気軽な調子で言ってくれる。  こんなの時間外労働なのに。それにどう考えてもこの場だって奢ってくれるだろうし。  私がこんなことを頼んだせいで、五条さんはこの後残りのメンバーにも同じことをしなくてはならない。時間とお金と労力を費やして。  軽はずみだったかな、と今更思っても後の祭りなのだけれど、申し訳ない。 「雨木ももう入社六年目だっけ?」 「はい、そうです」 「そろそろ落ち着いてきて、次が気になる年だよなぁ」  そう、入社六年目。私もついに二十八。  所謂ザ・アラサーな訳である。  将来のことが色々気がかりな年齢だ。仕事はもちろん、結婚とか、子どもとか諸々も。  五条さんにくらりと来てから、もちろん私に彼氏なんてものは存在していない。一向に結婚の気配を見せない娘に、どうやらそろそろ両親もそわそわしてきたらしい。  先日、いきなり郵便が届いた。  中身は――――――――見合い写真だった。  藪から棒にそんなものを押し付けられて度胆を抜かれたが、そうか、そんな心配されるようになってしまったのかと愕然とした。お見合いについては丁重に丁重に辞退させて頂いたのだけれど、でもその時ハッとしたのだ。
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