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分かってない その3-5
「私、何の権利もない赤の他人だよ。邪魔者だよ。限りなく不自然な相手だよ」
パパが新しく家族を作ったら、とてもじゃないけど私はそんなところに割り入っていけない。それはあまりに無神経な行為だと、そう思う。
「それに、私が言ってるのはそういうことじゃないの。不安だからこんなこと言い出してるんじゃない」
ときめいたり、痛んだり、その両方できゅうっとなるこの胸は、家族の"好き"の枠をとっくにはみ出してる。
笑った顔が好き、優しい手が好き、私のワガママにしょうがないなって付き合ってくれるところが好き、寝起きのちょっと抜けた表情が好き。
忙しい毎日を支えたい、楽しいことを沢山共有したい。
頭を撫でられるんじゃなくその手で触れられたい。抱き締められたい。唇を合わせたい。全部全部、私をもらってほしい。
私の"好き"はそういう"好き"。
どろどろの要求がいっぱい詰まった、でも間違いなく"恋"という色に染められた気持ち。
本当はこんな八つ当たりみたいな感じで言いたくなかった。上手くいく可能性が皆無でも、大切に大切に伝えたかった。少しでも綺麗な思い出にしたかった。だけどもう、今更だ。
「私に、パパの隣にいる権利を保証してくれるなら、私をパパの特別にしてよ。パパのーーーー」
言ったら、終わっちゃう。
全部が滅茶苦茶になっちゃう。
私は後悔する。ものすごく後悔する。
知ってる。分かってる。だけどでもそれでもーーーー
「パパの恋人にしてよ」
言葉は、転がり落ちてしまった。
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