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分かってない【パパ編】 その1-2
「香凛?」
「んくぅ」
一度奥まで捩じ込んでから、動きを止める。こちらを飲み込んで膨らんだ下腹を下から押さえ付けてやる。
「んん――――っ!?」
指先に感じる自身の硬さ。外からと内からの刺激に香凛がビクビクと身体を震わせた。
「香凛、その呼び方はやめるって話じゃなかったか?」
「え、あ、あ……」
「すーぐ戻るな?」
「ち、ちが、ゆきやさ」
いつまでもパパ呼びじゃマズイだろと、せめて恋人らしいことをしている時くらいは名前で呼ぶようにと言っている。
だが、香凛は余裕がなくなるとすぐにオレのことを“パパ”と呼んでしまう。
「いつになったら香凛は正しい呼び方を覚えるんだ」
そう呼ばれて興奮するクセに、白々しく香凛を責める。
「あ、つぎは気を付ける、からっ」
「いつもそう言うが、口だけだ」
「んんっ、頑張る、から……!」
正直、二人きりのこんな状況で香凛がオレのことを何と呼ぼうと構わない。
慣れた甘い声で“パパ”と呼ばれるのも、恥ずかしそうに“征哉さん”と呼ばれるのもどちらも好ましい。
ただ、理由が欲しいだけだ。
「お仕置きだな?」
香凛を執拗に抱く、その理由が。
「待って、やだ、あふぅ!」
だから毎度、香凛の正常な判断が揺らぐまでガンガンに責め立てて、わざと“パパ”と呼ばせる。呼ばせておいて、それを責める。責めた後は、お仕置きだと称して、要するに好きなようにしかしていない。
大人の余裕なんてものは、いつも存在していなかった。そんな自分に嫌気が差すことはしょっちゅうだが、本来手に入るはずがないと思っていた相手がこの腕の中にいると思うと、馬鹿みたいに自分の欲望を優先させてしまう。いや、本当に大人げない。
「んくっ」
身体を引っ張り起こすと、香凛はきゅっと身を縮こまらせた。蜜口には己が埋まったままだから、下から串刺されるその圧迫感に身体が啼く。
片方の腕を腹に回し、もう片方の手をすっかり膨れ上がった陰核に伸ばす。
「ふぁ!」
トンとソコを指先で叩いてやれば悩ましげな声が漏れた。
トントンと拍子を取るように一定の感覚で刺激を与える。
「あ、んぁ、やだぁ……」
耐え切れず香凛は身を捩ったが、こちらの腕に閉じ込められているのでそれは大した意味をなさない。
「パ、ちが、ゆ、征哉さん! それ、止めて……!」
「気持ち良くなかったか? 香凛のナカは触れる度にきゅうきゅう締まるが」
それは事実だった。もっともっととねだるようにソコは己を締め上げてくる。
「でもっ、ナカ」
「ナカ?」
「ソコばっかりなんだもん! んう!」
「ココばかり?」
確かめる体を装って、そのままぐりぐり弄れば、また身体が跳ねる。
「あぁっ、だから駄目なの、んやぁ、ソコしか触ってくれないの、我慢できな」
嬌声はどんな酒より頭に響く。
「ナカ、動いてくれないの、やだ!」
「お仕置きだからな?」
「ちゃんと呼ぶもん……!」
「だがさっきもうっかりしかけていたぞ」
トン――――
「あふっ、呼ぶ! ちゃんと呼ぶから」
トントン――――
「征哉さんん!」
焦れた身体が自ら動いてどうにか快感を得ようとするが、それを抑えるようにぐっとその身体を引き寄せた。
胸板に滑らかな背が触れる。しっとりと汗ばんでいて、吸い付くような感覚。
自分の身体と違ってこの身体はどこまでも柔らかい。
「征哉さん征哉さん征哉さんっ」
「うん」
「征哉さん、ナカ、いっぱいだけど、でもこれだけじゃ駄目なの」
じゅわり、また接合部がぬかるむ。
「ゆき、やさん!」
そわり、次は撫でるように触れると香凛はその瞳を一層潤ませ、身体には小さな痙攣を走らせた。
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