分かってない【パパ編】 その1-5

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分かってない【パパ編】 その1-5

「香凛」  戸惑う香凛の頬をそっと撫でる。 「誰も見てない」 「っ……!」  そして唆すように甘く優しく囁くと、おずおずと両脚が腰に回った。  本当にそっと絡めているだけ、触れているだけという体だが、もうそれで十分だ。  どうせそのうち訳が分からなくなれば、快楽が誘うままに身体は動く。 「ふっ、んぁっ」  中断していた律動を再開すれば、大きな水音が部屋には響いた。ぱちゅんぱちゅんと打ち鳴らす毎に、ナカのうねりと締め付けが強くなる。 「っく」 「ひゃ、んん、激し……!」  激しいと言いながらも、その顔がどんどん恍惚の色を浮かべる。もっともっととせがむように伸ばされた腕がこちらの首に回り、引き寄せてくる。 「あう、待っ、んくぅ!」  言葉と態度は裏腹だ。  待ってほしいと言うクセに、いつの間にか腰に絡められた足にはぎゅっと力が入っていた。こちらを離さまいと、引き寄せるように腿に力が籠められる。  香凛のナカで己が耐え難くぶるりと震えかけたが、あと少しと言い聞かせて抜き差しを繰り返す。 「あふっ、やぁ! それ! 深いぃ」  香凛のイイところは全部知っている。  どこをどういう風にされるのが好きなのか。正気が飛ぶほど揺らぐのか。  抉るように奥の入口を何度も侵略すれば、ますます強く足は絡み付き、香凛の身体はベッドの上を跳ねる。 「も、だめっ、ね、ひうぅ、イっちゃう! ね、いぁあぁ!」  絞め殺す気なんじゃないかという強さでこちらを搾り取りながら、香凛が絶頂を迎えた。大きく痙攣する身体を、けれどまだ解放はしてやれず、追い打ちをかけるように数度、勢いを殺さず強く強くずぶずぶと突き刺す。 「いぁ、止め、いま、めぇ……!」  呂律の回らぬ舌足らずな声が上がるのと、香凛のナカを蹂躙し尽くした己が果てるのは同時だった。 「んくっ――――!」  ナカでびくびくと暴れる屹立に、香凛の身体にまた絶頂が追加される。過ぎた刺激に息も絶え絶えなのに、ソコはそれでも貪欲に吐き出されたものを飲み込もうと本能で蠕動を繰り返す。  膜越しに味わうその感覚は何度経験しても堪らない。  やがてゆるゆると吐精が収束を向かえると、強く熱を孕んだナカも力を抜いた。  惜しむ気持ちを押し殺して、ずるりと己を引き抜く。  香凛はすっかり気を失っていた。くてんと力の抜けた身体をそっと横たえる。  ひどい抱き方をしている自覚はあった。いつもいつも抱き潰すような真似をオレはしてしまう。 「本当に酷いヤツだ」  柔らかな頬を撫で擦りながら、突いて出るのは自嘲。 「香凛、お前本当にこんなヤツを選んでいいのか」  この半年、オレは余念なくじっくりしつこいくらいに香凛を抱いた。だから香凛のソコはもうすっかりオレの形を覚えていて、己を沈み込ませると嘘みたいにしっくりぴったり馴染む。  そうなるように、執拗に抱いたのだ。他の男を咥え込むような余地などないように。  香凛はオレが初めての相手だから比較相手などおらず分かっていないだろうが、正直に言うとオレはあまり標準的な規格をしていない。平均の上を行っているサイズ感なのだ。だからこれだけオレの形に馴らされてしまえば、そうそう他では満足できないことだろう。  別に香凛の気持ちを疑っている訳じゃない。  だが、こんなに年下の若い恋人が出来れば、よほど自分のスペックに自信がない限り、大抵のヤツは不安要素を潰すことに躍起になるものだ。 「……………………」  あまりに余裕がなくて笑えてくる。  オレはきっと香凛にとって優しい恋人じゃない。  香凛はいつも必死だ。こちらに釣り合う存在になりたいと。  オレのことがよほどちゃんとした大人にでも見えているらしい。  でも、実態はこんなものだ。  香凛の世界に別の男が現れることを常に危惧している。  余裕がないから、何も知らない香凛に自分の基準を押し付けて、目隠しをするような真似をしている。  自分の方が追いかける側でいつだって必死なのだと香凛は振る舞うが、実際は逆だ。  必死なのは、余裕がないのは、本当はこちら側だと言うのに。  ――――本当に、香凛はなんにも分かってない。
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