分かってない【パパ編】 その2-1

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分かってない【パパ編】 その2-1

“パパが欲しい”  誕生日のプレゼントのリクエストを訊いてそう返された時、己の耳を疑った。 “パパを私にちょうだい”  それがおかしな意味に聞こえて、次に自分の頭を疑った。  まるで告白されているみたいだなんて、一体自分は何を考えているんだと。 “…………あぁ、あれか、一日オレを独占したいって? 良いよ、有休取ってどっか連れてってやろうか”  頭の中に浮かんだ色惚けていて、ついでに倫理的に引っかかりそうな発想を押しやって、オレは真っ当そうな解釈を捻り出した。  アレだ、香凛はちょっとファザコンのきらいがあるから、たまに甘えたことを言い出すのだ。親代わりとしては可愛いものだが、そろそろどうにかしないといけないかもしれない。誕生日くらいは甘やかすのもやぶさかではないが、いい加減きちんと線引きしなくては。香凛もそう遠くない内に大学を卒業することだし。  どこかで妙な動揺を覚えながらも、オレは保護者としての回答をしたと思う。  けれど。 “違う”  香凛はオレのなけなしの答えを見事に撃ち落した。 “半永久的に欲しいって言ってるの”  オレは再び耳を疑った。  この会話は一体どこへ向かっているのか。香凛は一体何をオレにねだっているのか。  雲行きが怪しいことになっている。  強張った顔、不安に揺れる瞳、何かを我慢するようにぎゅっと握られた拳。  目に映る全てが、香凛の言動に冗談の成分など欠片も含まれていないことを教える。  半永久的にオレが欲しいというのは、一体どういうことなのか。  また頭の中におかしな考えが過って、そんな馬鹿なことはないし、あっても許されないだろうと冷静な声が響く。
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