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分かってない その2-1
私とパパは十六、年が離れてる。
パパ、なんて呼んでるけど、本当はパパは私の父親じゃない。
相当やんちゃしたと過程すればあり得なくはない年齢差だけど、実際はそうじゃないのだ。
もちろん、そう呼ぶのに相応しいだけ、父親代わりであったのは事実だけど。
パパは、その名を五条征哉と言う。
宮木香凛という私の苗字とは全く違う。
じゃあ私とどういう関係があるのかというと、私のお母さんの弟がパパなのだ。
じゃあパパじゃなくて叔父さんだという話なのだが、実はそれも細かく言うと正確ではない。
パパのお姉さんであるお母さんは、実は私の産みの母親ではないのだ。
だからパパと私に血の繋がりというものは、一切ない。赤の他人。
産みのお母さんは私が一歳の頃に亡くなったらしい。だから残念で申し訳ないことに産みのお母さん――――由紀子お母さんの記憶が私にはない。
五歳の時に本当のお父さんと結婚したその人こそが、私の認識の中では他ならぬお母さんだった。
連れ子である私をお母さんは本当の子どものように育ててくれたし、私もすぐに順応した。母子関係はずこぶる良好だった。
お母さんのすごいところは、由紀子お母さんについても私にしっかり触れさせたことだ。折りに触れて写真を見せて“私も香凛のお母さんだけど、由紀子さんも同じだけ香凛のお母さんだよ”って語って聞かせた。
お墓参りも一緒に行った。内心複雑な気持ちはあったかもだけど、いつでもそうやって由紀子お母さんについてオープンでいてくれたことは、私にとってとても良いことだった。おかげで私はどんな蟠りも持たずに、お母さんという存在を自分の中で受け入れられたのだから。
お父さんお母さん私のこの三人家族の生活は、だからどこにでもある平凡なもので、そして平凡故の幸福が確かにあるものだった。
そんな家庭でぬくぬくと育ってきた私に、理不尽が襲いかかってきたのは十歳の頃だった。
両親が、事故に巻き込まれて亡くなった。二人をいっぺんに失った。
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